山と鉄

山歩き、乗り鉄、廃線・廃道歩き、廃村歩き、駅舎探訪などの日々を記録します

蝶ヶ岳(中)

快晴の27日朝7:35、まずは横尾に向けて出発。
それにしても爽やか。下界は熱帯夜の猛暑なのだろうが、ここは別世界だ。

横尾までの道は、上高地から徳沢までと同様、樹林の中の平らな道だ。
標高は上高地が1505m、徳沢が1562m、横尾が1620m。
梓川は水力発電のダムがあるだけあって、大正池より下流の方が急流だ。
こんな山奥で、これほど長い距離(10㎞以上)をほぼ水平に流れている川は全国でもほかにないのではないか。

歩き始めて間もなく、屏風ノ頭やパノラマコースを経て涸沢に至る入り口にあたる新村橋が左に見える。子供のように渡ってみる。結構揺れる。
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正面は前穂の6峰と7峰(たぶん)。
下流方面を振り返ると、徳本(とくごう)峠と霞沢岳(2646m)が見えた。
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今度、上高地に来る時は、ここをやろうと思っている。
釜トンネルが開通する以前は、上高地への入り口は徳本峠だった。
今も島々から徳本峠に至る7時間半に及ぶ道のりを歩く登山者が少なくないと聞く。おそらく、徳本峠小屋のご主人のお人柄によるのだろう。
旧街道ファンの私としても、このクラシックコースを歩いてみたい。
そして、徳本峠小屋に泊まり、翌日霞沢岳をピストンして上高地に下る計画だ。
2日目のコースタイムは10時間近いので、かなり厳しいのだが。

横尾に近づくに従い、前穂の正面に出てきた感じがする。
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胸にいだく雪渓も姿を現し、長七ノ頭や茶臼ノ頭に隠れていた全容を見せてくれる。
それにしても、ものすごい岩峰の列である。前穂の北尾根にも登山道はない。

赤い地肌を痛々しげにさらけ出した赤沢山(2670m)も見えてきた。
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このあたりでも高山植物に出会えた。
いずれも自信はないが、たぶんこれはヤマルリトラノオ。
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ほんで、これはおそらくミヤマシャジン。
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これはヤマホタルブクロかな。
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前穂や明神が後ろへと去り
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南岳へと延びる横尾尾根が見えてきたら、横尾はすぐそこ。
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横尾に着くと、屏風岩の陰から、槍への縦走路が姿を現す。
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横尾は、涸沢や槍、蝶への分岐点に当たり、横尾山荘の前では多くの登山者が一息ついていた。
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こちらも一服。山荘で本物の七宝焼だという蝶ヶ岳のバッジ(600円)を購入。
ふつうのバッジより100円高いが、蝶ヶ岳ヒュッテに万が一なかったら、一生後悔することになるので奮発した。チョウの形の中にシナノキンバイをあしらった、なかなかのデザインである。

さ~て、ここからが本格的な登り。断然、穂高や槍に向かう人が多く、蝶への道を選択する人は少ない。
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この道は、尾根直下までは樹林帯の中で、ほとんど眺望は期待できない。
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道も地図上は等高線と直交しており、相当な急坂が予想される。
「山と渓谷」の8月号で、この登りは日本名急登100のうちの26番に挙げられていた。平均斜度は15.5度。確かにこれはすごい。
でも、道はジグザグに付けられており、想像よりはきつくなかった。
眺望がなければ、お楽しみはお花。
こちらは、葉緑体のない変わった植物であるギンリョウソウ。別名・幽霊草とも言うのだとか。
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ゴゼンタチバナ。これはあちこちに咲いている。
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ただ、登るに従い、木々の合間から展望が限定的に開けることがある。
そういう瞬間を見逃さないのが、私の信条。
これは穂高と槍の間にある南岳の山容。
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ぬりかべ、と言うか、下川辰平というか四角い顔が印象的。

しばらく、ササの中の樹林帯を登ると
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横尾から30分ほどで、槍見台に到着。
ここは広い場所ではないが、確かにすばらしい槍の展望台だ。
上高地から10㎞以上延々と歩いてきて、初めて槍が望める場所である。
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(左から屏風岩、南岳、すこし離れた小さいピークが中岳、手前の緑が横尾尾根、そして槍)
まだまだ遠慮がちだが、その尖塔は実に存在感がある。

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(左肩に赤い屋根の槍ヶ岳山荘が見える)
いずれ、あそこも登ろう。
だが、私としては、いきなり本丸を落とす主義ではない。
今回の蝶に続き、霞沢岳、焼岳を登って外堀を埋めてから、前穂、奥穂、北穂と正面から時間をかけて攻めたい。だから、たぶん槍沢は登山路ではなく、下山路ということになるだろう。まあ、そんなことを言っていたら、いつのことになるやら。

槍見台までコースタイム50分のところを30分で登ってしまった。
これは多分、編者の間違いであろう。こちらとしては、別段急いでもいない。
昭文社さん、要検討の箇所だと思います。

槍見台で写真を撮っていたら、高校生の集団が下山してきた。
おそろいの青いTシャツの肩に「SEISOKU」とある。甲子園でもおなじみの正則学園だろうか。
山岳部系なのかどうか分からないが、みな結構な勢いで下ってきた。
顧問らしき先生が「ここから下りのコースタイムは30分。15分で下るか!」と叫んでいる。主将らしき少年が「はい」と言いつつ、「ただ、佐藤の様子が・・・」などとバテている仲間を心配していた。
昔からありがちの、しごき山岳部ではなさそうで安心した。

ここから、ひたすら樹林帯。
道しるべのペンキの○印がやたら目立つ。
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そんな木々の間から前穂(3090m)も負けじと絶壁を見せてくれた。
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続いて、北穂高岳(3106m)
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そして、涸沢岳(3103m)
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なかなか主峰の奥穂がなかなか、もったいぶって姿を見せない。

2度ほどの休憩をはさんで、えんこら登り、横尾から3時間半、やっと森林限界に達し、視界が一気に開けた。
日が高くなって、色の鮮やかさには欠けるが、まずは正面に穂高連峰。
山頂部にガスがかかり始めているが、右から北穂、涸沢、奥穂、前穂。
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わずかに右に目を転じれば
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右から槍、わずかに雲を絡めた大喰(おおばみ)岳(3101m)、小さな三角ピークの中岳(3084m)、台形状の南岳(3033m)、そして大きく湾曲した大キレット。

左遠くには、霞沢岳と右奥の雲の中に乗鞍岳(3026m)
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これらが首をわずか90度振るだけでみんな見えてしまうのだ。
なんという至福。これがあるから登山は止められない。
疲れなど、一気に吹っ飛ぶ瞬間である。

ここから稜線へは、ハイマツの生えたガレ場を登ること5分ほど。
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稜線に立てば、東側の山々も見ることができる。美ヶ原に八ヶ岳、南アルプスに、運がよければ富士山・・・
期待に胸をふくらませて、急ぎ足で稜線に立つと、なんと東は一面のガス。
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まあ、仕方ない。槍・穂高だけで十分。割り切りは早い方だ。

この稜線の分岐点で昼食とする。
日を遮るものは何もないが、心地よい風が吹いて、気持ちいい。
正面に槍・穂高のパノラマが広がる絶好の展望レストランだ。
メニューはフリーズドライのカレーライスと豚汁。
徳沢園の食事に比べると、いかにもみすぼらしいが、これはこれでかなりうまかった。
徳沢園からお湯をもらってきていたので、できあがりも早かった。

40分ほど休み、ここから空身になって蝶槍を往復する。
しばしの空中散歩。標高差もほとんどなく、ザックを下ろすと無重力のように体が軽い。

正面右に常念岳が見えるはずだがガスで見えない。
ただ、左前方には大天井(おてんしょう)岳(2922m)とはるか遠くに野口五郎岳を望むことができた。
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(大天井岳)

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(野口五郎岳)

蝶槍はほんのささやかな尖塔である。
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三角点もなければ、地図に標高の表示もない。おそらく2660mくらいだろう。
でも、地図に名称の標記はあるので、登った山の1つに数えることにする。

さて来た道を戻る。
これまで山の稜線ばかり見てきたが、谷も深い。
谷を見ると、山の大きさも分かる。
写真は、右が槍沢の谷、左が横尾の谷である。二つが合流して梓川となる。
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蝶槍から蝶ヶ岳への稜線は、ガスが出たら迷ってしまいそうな、広い尾根である。
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視界が開けていれば、なんとものんびりした雰囲気だ。
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はるか下には梓川の流れも望めた。
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ザックを回収して、あとは蝶を目指すのみ。
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この先も気持ちのいい稜線だ。岩の陰にはチシマリンドウの群落が風に揺れている。
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コケモモやイワツメクサも短い夏を謳歌している。
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ハイマツは早くも来年に備えて、松ぼっくりをたわわに実らせていた。
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間もなく東のガスの切れ間から安曇野がうっすらと見えてきた。ありがたい。
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このあたりの稜線は、槍・穂高抜きでもなかなか絵になる。
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で、展望台の「瞑想の丘」を過ぎて、午後3時、蝶ヶ岳ヒュッテに到着。
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ここは予約不要の小屋なので、とにかく受付を済ませる。1泊2食9000円。北アルプスは関東や奥秩父に比べ相場が1500~2000円高い。
靴を脱ぐのが面倒なので、部屋への案内は後回しにしてもらい、まずはすぐ先にある頂上に向かう。なんとビールの自販機があったので、350ml(500円)を買い、キャンプサイト経由で頂上へ。2677m。祝杯だ。
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眺望は今まで堪能して来たのとそう変わらないが、穂高連峰の陰から焼岳が姿を現したのと、徳本峠に通じる長大な稜線にある大滝山を間近に見ることができた。
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しばし、たたずみ感慨にふける。

北アルプスは6年前の今頃、常念岳に登ったことがある。
でも、その時は大勢の経験者に連れられてきた。
自力で来たのは今回が最初。初めて北アルプスの入り口に足を踏み入れたというのが実感だ。これから、ここに何度も来ることだろう。今後ともよろしくお願いします。

小屋に戻ると、部屋に案内された。受付番号101番。今日はすでに150人が泊まることになっているという。
寝る場所は3階の屋根裏部屋。2階からはハシゴで登り、70㎝四方の穴を通らなければならない。
トイレが面倒そうだ。

とにかくまだ4時。食事の5時半までは、部屋で山行記録を付けて過ごした。
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それぞれの山で表情が全然違うのですね。北海道では見れない景色に感動!

  • 2012/08/01(水) 14:30:02 |
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