最終日の15日は何とか晴れてほしい。
そんな祈りを込めつつ、ずっと気になっていた山梨の乾徳山(2031m)に向かった。
たぶん家を出発したのは朝の5時過ぎ。
乾徳山の登山口はいくつかあるが、一番標高の高いところということで大平(おおだいら)高原を選んだ。
しかし、そこまでのアプローチに意外と時間がかかった。
勝沼で高速を下りて、塩山市街を縦断し、三富からの林道がまた実に長い。
一応舗装はされているが、道は細く勾配も急。
軽のパジェロミニではギアをセカンドまで落とさないと進まなかった。
で、3時間以上かけてやっと民宿大平荘に到着。
車はまだこの先まで行けるが、大平高原もちゃんと歩きたかったので、民宿前の駐車場に置くことにした。
駐車料金は1台800円。

もちろん、きちんと払うつもりだったが、民宿のおばあちゃんが、早速エンジン音を聞きつけて徴収に来た。
ならばと、トイレを借りることに。
大か小かと聞かれたので、恥ずかしがらずに「大です」と大声で答える。
おばあちゃんは残念そうな顔で、宿泊棟のトイレを案内してくれた。

「靴脱いでよ」だって。
屋内に入るんだから当たり前じゃん。
小だったら、おそらく外のトイレで済ませられたのだろう。
せっかくだから、たっぷりとプレゼントしてあげた。
受付に礼を言いに行くと、なんとバッジが売っていた。
迷わず、1つちぎって、「これ下さい」と言ったら、600円だった。
値段が書いてなかったから、ふっかけられたんじゃなかろうか。
「これいくらですか?」って聞いたら、500円で済んだような気がする。
疑いすぎか。
とにかく準備を終えて、8:45出発。随分遅くなってしまった。
この民宿はかつて大平牧場も経営していたようだが、今は閉鎖され、牧舎などが廃墟となっている。

ただ、牧草地は昔のままの雰囲気を残していた。
5分ほど歩いたところで登山口に達する。

牧草地の縁を歩いていく。正面は小屋沢ノ頭か。

ほんの少し登ると、なんと富士山が顔を出した。

これはラッキー。
今日は幸い天気がよかったけど、富士山は霞んでいるような気がしていただけに、ありがたかった。
これは牧場の跡地。

1999年に廃業したと、とあるブログに書いてあった。
樹林を抜けると、再び林道と交差。

ここにも登山口と大きく書いてある。
横着しようと思えば、ここまで車で来られる。しかも無料だ。
実際に車が1台あったが、とくに損した気はしない。
15分ほど歩くと

道満尾根に出る。
しばらく廃道になった林道のような道を歩き、左に国師ヶ原への道を見送ると、登山道は急に緩やかになる。

途中、富士山方面にガスがかかり始めたのが見えて、「ああ早くもこれで見納めかあ」と思ったけど、この日はずっと富士山が付き合ってくれた。

稜線からは、時折、右手に奥秩父、左手に雲をかぶった南アルプスが見えた。
これは奥秩父方面。

一番奥の稜線が奥秩父主脈で、中央やや右側の切れ込みが雁峠(1780m)。
その向こうに覗いているのは、あこがれの和名倉山(2036m)であろう。
こちらはそのさらに左。

左の二つのピークがおそらく破風山(2318m)と東破風山。
中央右よりが雁坂嶺(2289m)、その右の凹みが雁坂峠(2082m)と思われる。
そうこうしているうちに、開けた場所に出た。

扇平である。
ここからの富士山の眺望も見事だ。

非常に均整のとれた形をしている。
扇平の中心に位置するのが月見岩。

ここで、老夫婦が休んでおり、多少言葉を交わした。
彼らは私が撮影に夢中になっている間に、出発してしまった。
ここの標識に「扇平 1850m」と書いてあったが、これはとんでもない誤り。

まだ1750mだ。100mも違うではないか。
再び樹林帯に入る。岩が多くなってくる。

道を外れて、稜線から突出した岩に登ると

絶景が見られる。

今登ってきた道と大平荘も見下ろすことができる。

ぱっかり二つに割れた、髭剃岩。

この先は結構な岩場が続出。こんな梯子を下ったり

こんなクサリ場にも出くわす。

さっきの老夫婦にここで追いついたのだが、旦那さんの方が奥さんに向かって怒鳴る、怒鳴る。
「足場固めれば大丈夫だって!」
「ほら後ろがつかえてるんだから、急げよ!」
「なんで、諦めるんだ!」
こちらがいたたまれなくなるくらいだ。
でも奥さんは全然動じない。
のらりくらりとした言葉でかわし、逆ギレしたりは絶対しない。
これが年の功というものだろうか。
あの調子では、普段の生活でも怒鳴られ続けているのかもしれない。
旦那さんに悪気がないのは分かっているからなのだろうけど、よくそんな人と山にまで一緒に来るなあと思ったのであった。
昭文社の登山地図には、「クサリ・ハシゴ」としか出ていないが、このあたりはかなりアルペンムードを楽しめる場所だ。というか、乾徳山がこんなに歯ごたえのある山だとは知らなかった。

クサリで登り切った岩場からは扇平や大平牧場が公園か何かのように見下ろせる。

おっと、左前方には、金峰山の五丈石が!

そして、行く手にはいよいよ頂上が見えてきた。

最後の最後の登りもクサリ場。

ここでも、旦那さん、怒鳴り散らしていた。
岩場に咲くシモツケソウ。

で、11:10登頂。2時間半ほどで登ってきたことになる。

頂上もかなりの岩場で、座るところを見つけるのに苦労したほど。

ここで早めの昼食。例によって、コンビニおにぎり。
頂上からはもちろん、甲府盆地の向こうに富士山が望めたが

甲武信岳が見えたのにも感激した。

手前左の大きな山体が黒金山(2232m)。その右に低く連なるのが牛首(2086m)。
その背後に居並ぶのが、左から水師(2396m)、甲武信岳(2475m)、木賊山(2469m)。
奥秩父の主脈も秋が深まった頃に縦走したい。小屋が開いているうちに。
さて、当初の予定では、ここから下山道を通って、国師ヶ原の廃墟化しているらしい高原ヒュッテを見学して大平高原に戻る予定だったが、それではちょっと早く着きすぎる。
しかし、黒金山をピストンするのも億劫だ。
地図を眺めていて、はたと気づいた。
今まで、登山道の赤線しか見ていなかったが、黒金山から牛首まで縦走して、天科方面に下ると途中で林道にぶつかる。それを延々歩くと、大平牧場に戻れるではないか。
しめた! これでピストンせずに、黒金山の手前にある笠盛山(2072m)を含めて3つも「登った山」を稼げるではないか。
いいことに気づいた。下山は止めて、縦走へと向かうことにする。
コースタイム的にはあと5時間くらいか。
かなり長いが最後の1時間は林道だし問題あるまい。
(つづく)
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