山と鉄

山歩き、乗り鉄、廃線・廃道歩き、廃村歩き、駅舎探訪などの日々を記録します

江の島(上)

1月13日はすこぶるいい天気だったのだが、この日は朝いちで病院に行かねばならず、山へ行く時間はなかった。なので、用が済んだ後、またまた鎌倉散策に向かった。

今回の目的地は江ノ島駅周辺。江ノ島に来て、江ノ島に行かないのもへそ曲がりだが、すでに行ったことがあるので、行ったことのない場所を優先した。
歩いたのは藤沢市の片瀬界隈と鎌倉市の腰越界隈である。

11時前に、湘南モノレールで湘南江の島駅に到着。
DSC_4470.jpg
湘南モノレールは一昨年初めて江の島まで完乗したのだが、モノレールにトンネルがあることを知って、びっくり。丘を越えて海岸に向かうので車窓風景も変化に富んでおり、この日は富士山がくっきりと見えた。

朝早かったのでもうお腹が空いてしまった。国道を渡ったところにある魚料理の「舟ぜん」にそそられたが、値段が結構高い。
DSC_4586.jpg
今入れば、店が空いているうちに食べられると思ったのだが、結局大枚はたく(それほどでもないのだが)勇気が出ず、そのまま歩き出してしまった。

するとすぐ左手の道端に「寛文庚申供養塔」がある。
DSC_4472_20130128125441.jpg

かつては日本中で庚申待ちといって、60日に1回めぐってくる庚申の日の夜は眠らずに過ごして無病息災を願う風習があった。
庚申供養塔もしくは庚申塔とは、その記念に建てたもので、江戸時代のものは全国各地にある。ちょっとした田舎には必ずどこかに残っていると言ってもいい。
庚申待ちとは、庚申の日に寝てしまうと、三尸(さんし)という虫が体から抜け出して、その人の罪を天帝に伝えてしまうため、寿命が短くなるという道教の教えに基づくものだ。
だから、庚申塔には三尸に告げられないように「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿が彫られていることが多い。
この供養塔は寛文年間(1661~73年)に造立され、天保13年(1842年)に修理されたものと考えられていると、説明板にあった。

ここから神谷道倫著『深く歩く 鎌倉史跡散策』に従って、旧跡を訪ねていく。
以下の説明はほぼ、この著作に基づく。

次は一遍上人地蔵堂跡だが、そこに行く途中、閑静な住宅街の中に、妙なものを見つけた。
DSC_4477.jpg
ほとんど廃屋状態の家の前にペットボトルで作った飾り(?)が無数に括りつけられている。何かのアートなのだろうか。

で、一遍上人地蔵堂跡は「片瀬3丁目まちかど公園」という小さな公園の中にある。
DSC_4485.jpg
この説明板が立っているだけなのだが、それによると
時宗を開いた一遍(1239~1289年)が1281年3月1日、全国を遊行中、鎌倉に入ろうとしたところ、時の執権・北条時宗に拒まれ、ここ片瀬の浜の地蔵堂に4か月ほど留まり、布教に努めたという。その地蔵堂の跡がこのあたりだと伝えられるのだそうだ。

住宅街を北に進むと、諏訪神社下社にぶつかる。
DSC_4492.jpg
神社はまだ何となく正月気分が残っている。

いい加減、お腹がぐーぐー言い出したので、一旦国道に出て店を探すと、セブン―イレブンがあった。お昼はどこかでちゃんと食べるとして、とりあえずつなぎのパンを購入。食べながら歩く。

片瀬小学校の校門前に、「ゑ能し満(江の島)道」と刻まれた石標が立っている。
DSC_4498.jpg
上部には弁財天を示す種子(しゅじ)「ソ」を示す梵字が刻まれ、両側面に「一切衆生」「二世安楽」と記されている。生きとし行けるものの二世(現世及び来世)の平穏無事を祈念した文句だ。

この道標は江の島弁財天を篤く信仰した杉山和一検校(けんぎょう)(1610~94年)が、江島神社への参詣者のために48か所に建てたものの1つである。
現在は藤沢市内に11基残されているらしい。
検校というのは盲人の最高位のことで、有名な検校には八橋検校や塙保己一などがいる。

ここからとって返して南に向かうと、左手に諏訪神社上社が現れる。
DSC_4517.jpg

拝殿は高台にあり、ここから富士山がきれいに望めた。
DSC_4521.jpg

こちらは江の島。
DSC_4525.jpg

近くの密蔵寺には本尊の愛染明王にちなみ「愛染かつら」の木がある。
DSC_4537.jpg

これは、戦前の映画「愛染かつら」に看護婦役で出演した女優の木暮実千代が昭和30年に植樹したものだという。
DSC_4538.jpg

境内には弘法大師の石像がずらりと並んでいた。
DSC_4530.jpg

江の島弁財天道標はこの近くにいくつもある(左。右は庚申塔)。
DSC_4543.jpg

この先の本蓮寺へはあかぬけた参道を通っていく。
DSC_4544.jpg

左手に「鎌倉殿 駒繋の松」がある。
DSC_4547.jpg
頼朝が1182年4月にこの地で休息することがあり、その時に馬をつないだのが、この門前の松だと伝えられる。
戦前までは樹齢750年の老松があったという。

境内はよく整備されており、なかなか立派な庭もある。
その中に、鎌倉幕府6代将軍宗尊(むねたか)親王の歌碑がある。
DSC_4560.jpg
「帰り来て又見ん事も固瀬(片瀬)川濁れる水のすまぬ世なれば」
将軍とは名ばかり、当時の実権は北条氏が握っていた。
1266年6月、宗尊親王をめぐって不穏な動きがあり、翌月、京に送還されることになってしまった。
その途中、ここ本蓮寺で詠んだのが、この歌。
「濁って澄むことのない鎌倉に二度と戻ってくることはないだろう」と北条氏を非難しているわけだ。

杉山検校が建てた道標のうち、1つだけ特別なものがある。
「西行のもどり松」と刻まれているものだ。
DSC_4566.jpg
もどり松とは、西行(1118~1190年)が東国に下った際、この松の枝ぶりの見事さに都が恋しくなり、思わず振り返り、松の枝も西へねじってしまったと伝えられる松のこと。

近年、植え継いだと思しき現在の松もこころなしか西にねじれている。
DSC_4564_20130128125344.jpg

間もなく常立寺。
DSC_4572.jpg

ここには、斬首された中国・元からの使いを供養する元使塚がある。
DSC_4581_20130128125348.jpg

1275年、元の皇帝フビライは日本に通交を求めるため杜世忠、何分著ら5人の使者を派遣した。しかし、時の執権・北条時宗は彼らを斬首してしまう。
このため、6年後の1281年の弘安の役を呼び込むこととなるのだが、日本は神風によって助かったのはご存じの通り。
斬首された5人はこの寺に葬られたと伝えられ、5つの五輪塔が残っている。
どれにも、モンゴルの行事では必ず用いられる青いカタが幾重にもかけられていた。
後ろにあるのは、大正14年に建立された供養碑である。

常立寺を出て左(江の島方面)に向かうと、湘南江の島駅の手前でY字路となり、その分岐に江の島弁財天の道標がある。
DSC_4640.jpg
向かって右面には「従是(これより)右江嶋道」、左面には「左龍口(たつのくち)道」と彫ってある。これは、例の杉山検校が寄進したものではないという。

コースは左なのだが、右へ進んでさっきの「舟ぜん」に向かう。
本格的にお腹がすいた。
しかし、扉を開けると、ほぼ満席。
これでは随分、待たされると思い、別の店に行くことにした。

せっかく江ノ電江ノ島駅の近くまで来たので駅舎を撮影。
DSC_4589.jpg
ハーフチンバー風の三角屋根が印象的な木造駅舎だ。
駅員さんに聞いたところ、建築はわりと新しく平成元年か2年頃だという。

さて、今日の目的の1つである江ノ電の併用軌道見学である。
江ノ電は民家の軒先すれすれのところを走ることでもよく知られているが、基本的には専用軌道である。わずかに江ノ島~腰越間500mほどが併用軌道となっている。
以前、江ノ電に乗って、ここを走った時、「わあ、ここを歩いてみたい!」って思ったのだ。

やっとその日が来た(ってほど、おおげさなものではないが)。

まずは江の島駅から車道に飛び出す踏切がすごい。
いきなり交差点に出てくる。それも五差路。
DSC_4596.jpg
五差路なのに、江ノ電がそこを斜めに横切るものだから、信号がない。遮断機もない。つけようがないのだろう。
電車が通る時は一応、警報機は鳴るのだが、車はみな呼吸を合わせるしかない。

この日は日曜日で車通りも激しいとのことで、警備員というか交通整理の人が2人いた。
警報機が鳴り始めると警備員さんが車を止める。
DSC_4604.jpg
こんなんでよく事故が起きないものだと思う。
逆にみな注意するのかもしれない。

この交差点に名物なのであろう、「江ノ電最中」の店「扇屋」がある。
DSC_4595.jpg
見ての通り、車両が店舗に埋め込まれている。
最中は1個130円だったが、なんか乗せられるのがシャクで買わなかった。
ちょっと失敗した気分。

で、併用軌道はこんな風になっている。
DSC_4626.jpg
DSC_4740_20130128125302.jpg

まともな歩道がないので、人が歩くと、車は必ず、軌道に乗り入れてしまう。
それが普通の風景。
でも、電車が来ると当然きちんとよけなければならず、よけ方が足りないと、電車が止まってしまうことも。
なんとも昭和チックな風景で、見ていて飽きない。
DSC_4761.jpg

沿道にも、こんなレトロな自転車屋さんと写真館があった。
DSC_4632.jpg


(つづく)


スポンサーサイト
このページのトップへ

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • 2013/08/26(月) 09:57:24 |
  • |
  • #
  • [編集]

Re: 丁寧な説明で嬉しいです

夢曼陀羅さん、読んで下さり、ありがとうございます。

今度、江の島に行く時には、舟ぜんに是非行きたいと思います。

  • 2013/08/27(火) 10:15:02 |
  • URL |
  • かたこりまさかり #-
  • [編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://satsunan226.blog.fc2.com/tb.php/170-056cd6ee
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
このページのトップへ

FC2Ad

プロフィール

かたこりまさかり

Author:かたこりまさかり
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (4)
北海道の山 (92)
東北の山 (62)
上信越の山 (139)
奥多摩の山 (55)
丹沢の山 (55)
奥秩父の山 (83)
栃木の山 (32)
房総・常陸の山 (9)
奥武蔵・秩父の山 (87)
中央線沿線の山 (96)
富士山周辺の山 (60)
八ヶ岳周辺の山 (54)
南アルプス (100)
史跡歩き (11)
中央アルプス (27)
北アルプス (37)
日本海の山 (8)
関西の山 (30)
四国九州の山 (61)
駅舎の旅 (21)
ドライブ (9)
廃線の旅 (12)
駅から散歩 (17)
乗り鉄 (38)
島の旅 (19)
山村の旅 (7)
超低山 (28)
東海の山 (2)
つぶやき (35)
旧道歩き (29)
伊豆の山 (39)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR