山と鉄

山歩き、乗り鉄、廃線・廃道歩き、廃村歩き、駅舎探訪などの日々を記録します

長良川の繞谷丘陵

11月4日は、地図エッセイストの今尾恵介さんに誘われて、「コンターサークルS」の歩く会に出かけた。
このサークルは、40年前『地図のたのしみ』で日本エッセイストクラブ賞を受賞し、その後も地図に関する本を精力的に書き続けている堀淳一さんが主宰する集まりで、地図や旅、旧道歩きなどの愛好家が参加しているとのこと。

以前から今尾さんに誘われていたのだが、今回やっと実現した。
集合場所は、岐阜県の長良川鉄道相生駅。集合時間は11:05。
会員には、それしか知らされない。出欠はとらず、来た人だけで歩き始める。
そういうルールだそうだ。

6:50東京発ののぞみ7号で出発。名古屋で、ワイドビューひだ3号(富山行き)に乗り換え、美濃太田でさらに9:50発の長良川鉄道「ゆら~り眺めて清流列車1号」に乗り込む。
DSC_9501.jpg
早めに着いたので、ボックス席の進行方向窓際を確保できたが、徐々に混んできて、席は満席に。

正面には外国人のカップルが座り、日が差して暑いので、彼女はブラインドを下げてしまった。私は思わず「ノー」と叫んでしまった。男の方が「(車窓が)ビューティフル?」と聞くので、今度は「イエス」と言ったが、彼女の意志は固く、諦めるしかなかった。
でも、刃物会館前駅あたりから、進行方向が西から北に変わって、日が入らなくなったので、彼女が寝ている間にブラインドを上げてしまった。

それはともかく、出発間際に、堀先生らしき方が何人かと乗車してきた。
そのうちの一人が私の隣に座った。
しばらくして、「コンターサークルの方ですか?」と聞くと、そうだという。
とても感じのいい方で、堀さんの本を読んで、地図が好きになり、このサークルにも参加するようになったそうだ。

車窓は湯の洞温泉口駅あたりから、長良川に寄り添って走る。
天気もすこぶるよく、気持ちのいい日だ。ところどころ、山も色づいている。
母野(はんの)、木野(こんの)などの難読駅名を通過して、11:05に相生着。
DSC_9510.jpg
東京から夜行で来て、すでに郡上八幡の町並みを歩いてきたという今尾さんや、車で参加のKさん親子が待っていた。
私を含めて7人のパーティーということになる。

この日の目的は、長良川が形成した繞谷(じょうこく)丘陵を見ることであると、車中で知った。
なんとマニアックな。

繞谷丘陵とは、私も最近、堀先生の本で知ったばかりなのだが、川の蛇行によって取り残された丘陵のことだ。
もう少し詳しく説明しましょう。
蛇行がショートカットされると、残された流路は三日月湖となって残ることがあるが、もとの流路に囲まれたところが小山だったりすると、これが新しい川の横に孤立して残ってしまう。これが繞谷丘陵だ。

DMGTMP00185.jpg
上の地図(25000分の1地形図「郡上八幡」平成17年更新、次の地図も同じ)がこの日歩いたエリアのうちの一つだが、この地図で言うと、「西乙原」の文字の左下にある細長い高まりが、それに当たる。
地図マニアもしくは地形マニアは、こんな地形を地形図で見つけては喜び、現地で確認したくなるのだ。
私は「山ヤ」である前に「地図ヤ」を自任しているが、まだまだその域には達していない。
今日はいい勉強の機会である。

相生駅前は古い大きな木造の建物があるなど、かつてはそれなりに自立した町だったことをうかがわせる。
DSC_9512.jpg

これは駅前旅館かと思ったら、薄くかすれた看板をかろうじて判読すると、「関化学相生工場」であった。
DSC_9517.jpg

相生は、明治8年に付近の6か村が合併してできた村で、明治30年にはさらに5か村を合併。大正9年の時点で人口は3945人に達する立派な「町」だった。
主産業は石灰だったというので、ここは石灰工場だったのかもしれない。
(どうしても工場には見えないのだが)
相生駅は昭和4年の開業というから、今の駅舎は2代目か3代目だろう。

これは「相生タクシー」と読めるが、いつまで営業していたのだろうか。
DSC_9522.jpg

さて、駅前通りから出て、みんなで地形図を確認。
DSC_9527.jpg
何の観光地もないところで、ちょっと異様な集団でもある。

近くの郡上八幡は「うだつ」の町としても知られるが、ここにもささやかなうだつがあった。
DSC_9529.jpg

清流、亀尾島(きびしま)川を渡る。
DSC_9541.jpg

八幡西中学校を右手に見て、少し進むとお目当ての繞谷丘陵が正面に見えてきた。
DSC_9548.jpg
古墳のように、というか毛虫のように横たわっているのが、それだ。
みな、それぞれに写真を撮っている。
地元の人が見たら、何事か!と思うだろうけど、幸い(?)誰もいなかった。

車中で知り合ったNさんは、地元の人がいるときは、まずこちらから「こんにちは」と言って警戒感を解いてもらう努力をしているとか。
そうしないと、本当に怪しい人たちに見えるのだ。

ところで、この丘陵の上にはかつて白山社があったが、いつの頃からか地図の「西乙原」の字の右上にある鳥居マークのところに移ったとのことである。
それが、こちら。
DSC_9556.jpg

近くには湧き水もあった。郡上八幡にも似たような水場がたくさんあったと記憶する。
DSC_9557.jpg
飲んでみたが、わりとぬるかった。

本当は繞谷丘陵を川の対岸から見たかったのだが、それだと国道を歩かないといけないので、昔の流路を歩いてきた経緯がある。
その流路の高さが結構、高い。現在の川より高いところで70mほども高い。
不思議に思って、堀先生に「回りの山から土砂が崩れてきたからですか」と聞いてみると、「それもあるだろうけど、隆起したんですよ」との答え。
高ければ高いほど、その流路は古いのだそうだ。
ここの場合は数十万年前といった見立てだった。

旧流路に形成された西乙原(にしおっぱら)の集落の景観はなかなかすばらしい。
DSC_9560.jpg
DSC_9570.jpg

見晴らしのいい場所に腰を下ろし、昼食にした。
ここから見た繞谷丘陵は「風の谷のナウシカ」のオウムに見える。
DSC_9569.jpg

コンビニで買ったおにぎりを持ってきていたが、今尾さんが郡上八幡で買ったという「朴葉寿司」をひとつくれた。
「お弁当用意してきてくださいと言うのを忘れたので、持って来なかった時のために買っておいたんです」
なんて親切な人だろう。ありがたく一ついただいた。とてもおいしかった。

皆さんがのんびりしている間に、気になったことがあったので、地元の人に聞いてみようと、一人でちょっと席をはずした。
ここから正面に見えるピラミッド形の山の名前が知りたくなったのだ。
DSC_9561.jpg
地形図では「八幡町吉野」の文字の右にある536.6mの三角点に当たるが、山の名称が書いていないのだ。

これだけ姿のいい山なら、地元では通称くらいあるだろう。
畑仕事をしている人に声をかけたら、「私は50年東京にいた。所沢(私の自宅のあるところ)にも何度も営業で行った」と懐かしがってくれた。
肝心の山の名前は「戻ってきたばかりなので分からない。分かる人のところへ案内する」と言って、近くの立派な家に連れて行かれた。
でも、そこのご主人も分からなかった。
「たぶん名前はあるはずだが、いつもみんな『三角点、三角点』と言ってるなあ」

ほう、それはそれで興味深い。そんなふうに呼ぶこともあるのか。
話しているうちに、繞谷丘陵のことは「小山」と呼んでいることも判明した。
なぜ我々がここにいるのかを聞かれたので、その「小山」がこれこれの理由でできた山なので、それをみんなで見学に来たんです、と説明したが、ほとんどそのことには関心を払われなかった。たぶん、普通の人には理解不能だろう。

堀先生は86歳、きりちゃんは3歳。
DSC_9581.jpg
ほほえましい光景だ。

丘陵の南側に回り込み、一周して相生駅に戻る。
しばらく線路の近くを歩く。
DSC_9595.jpg

途中、Nさんが「間もなく長良川鉄道の列車が鉄橋を渡りますよ」と教えてくれたので、絶好の展望所で待機。
するとカメラを構えた途端、列車がやってきて、あっという間に通り過ぎてしまった。
DSC_9598.jpg

駅に戻ってきたのは、午後2時40分。
14:58発の列車で、二つ先の赤池へ。
DSC_9603.jpg
この列車も、「ゆら~り眺めて清流列車」。運転士の方がマイクで観光案内をしていた。
思わず笑ってしまったのは、「この橋は個人的に一番嫌いな橋です」と紹介したから。
都会の電車でこんなことを言ったら、乗客から苦情が入って厳重注意処分を受けるだろう。
嫌いな理由がふるっている。
「普通なら60kmで走れるのに、30kmでしか走れないからです」
清流列車は観光列車なので、景色のいいこの橋にかかると減速して乗客サービスをしなければいけない。
それが実はいやなのだ。運転士って、やはりスピードを出したいんだなあ。そんな心理が分かって、ちょっと愉快だった。

堀先生はお疲れとのことで、赤池の繞谷丘陵はパスして帰ってしまい、あと2人も付きそう形でそのまま乗って行ってしまった。
残ったのは、今尾さんときりちゃんと私の3人。
DSC_9614.jpg
今尾さんは小さなきりちゃんと手をつないで、とても仲良し。
お母さまは車でこちらに向かっている。

3人で影踏みをして遊んでいると、お母さま到着。
今度の繞谷丘陵は大きいので、そのまま車で回っていただいた。
DMGTMP00177.jpg
相生の繞谷丘陵は高さ30m、長さ250mほどだったが、ここのは高さ90m、長さは750mほどもある。
地形図では、「赤池」の文字の左にある小山で、頂上に262.1mの三角点や神社がある。

赤池駅からはこんな風にみえる。
DSC_9610.jpg
う~ん、やはりただの小山である。これをおもしろがれるようになるには、相当な修業が必要そうだ。

こちらも、「裏」の高いところから見下ろそうと、国の天然記念物、神ノ御杖杉(おつえすぎ)がある熊野神社に向かう。
ここの杉はさすがに見事で、とりあえず繞谷丘陵はそっちのけ。
DSC_9629.jpg

角度によっては、こんな風に見える。
DSC_9649.jpg

それにしても、きりちゃんは神社が大好き。すべての祠を見ないと気が済まないようで、お母さまも呆れていた。
DSC_9635.jpg

振り返ると、繞谷丘陵はこんな姿。
DSC_9651.jpg

近くの民家に、なんとダットサンを発見!
DSC_9654.jpg
これも今回の収穫の一つ。

というわけで最後に、もう一度、長良川鉄道の写真を撮って、この日の踏査は終了。
DSC_9678.jpg

きりちゃんのお母さまに、子宝温泉まで送っていただいた。
DSC_9691.jpg
ここは、みなみ子宝温泉駅と直結しており、列車までの時間が信号で表示される。
30分以上あったら「青」、30分を切ると「黄」、15分前になると「赤」だ。
これはテレビの鉄道番組を見て、知っていた。

まあ、今尾さんと男二人で「子宝」もないものだが、次の列車まで1時間あるので、ゆっくり湯に浸かって、生ビールを飲む時間もあった。
この後、美濃太田、岐阜と乗り換えて、名古屋へ。その間ずっと飲み続けた。
乗り物で飲むと酔いが回るのか、新幹線に乗ったときには、すでにグロッキー。
東京まで爆睡してしまった。
誘ってくれて、そのうえ温泉やお酒まで付き合ってくれた今尾さん、本当にありがとうございました。

次のコンターサークルは11月23日に旧天城峠。私はそのまま天城山へ向かうつもりです。
スポンサーサイト
このページのトップへ

コメント

歩くのが大好きな私には、とても羨ましいサークルです。
掘さんの書籍、読んでみます。
北海道では、開催されないのかしら?

  • 2012/11/09(金) 21:09:33 |
  • URL |
  • ひろさん #-
  • [編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://satsunan226.blog.fc2.com/tb.php/133-26b9099c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
このページのトップへ

FC2Ad

プロフィール

かたこりまさかり

Author:かたこりまさかり
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (4)
北海道の山 (152)
東北の山 (62)
上信越の山 (139)
奥多摩の山 (55)
丹沢の山 (55)
奥秩父の山 (83)
栃木の山 (32)
房総・常陸の山 (9)
奥武蔵・秩父の山 (87)
中央線沿線の山 (96)
富士山周辺の山 (68)
八ヶ岳周辺の山 (54)
南アルプス (100)
史跡歩き (11)
中央アルプス (27)
北アルプス (45)
日本海の山 (8)
関西の山 (30)
四国九州の山 (61)
駅舎の旅 (26)
ドライブ (9)
廃線の旅 (12)
駅から散歩 (17)
乗り鉄 (38)
島の旅 (19)
山村の旅 (7)
超低山 (28)
東海の山 (2)
つぶやき (35)
旧道歩き (29)
伊豆の山 (39)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR