由布岳(1583m)頂上直下のマタエから西峰に挑んでいる。

マタエで抜かしていった女性を追いかけるが、すでに姿は見えない。

右手は火口への断崖。

お、彼女の後姿を捉えた。

しかし、さすが由布岳400回登頂の猛者だけあって、身のこなしが軽やか。

私は写真も撮らなければならないので、あせらず一歩一歩登る。

またしてもクサリ。天まで続いているように感じる。

やっとのことでクリアすると、また次の岩壁が現れた。

ちょうど女性が登攀中。

そのずっと上にもクサリが見える。

右前方にお鉢の中の顕著なピーク、剣ノ峰が見えた。

束の間の、ホッとする瞬間。

マジかよ。

振り返って、また呼吸を整える。

東峰のピークも見えた。

いざ。

ふう。クリア。

でも、次はこれ。

右に回りこむと、またクサリ。

登ってきた岩峰群を振り返ってみる。

マタエから東峰への稜線は今回は歩かない予定だ。

ここはクサリなしなのか。

と思ったら、ロープがあった。

よく見ると、東峰からの崩落が激しい。

さて、頂上はあのあたりかな。

女性の姿を見ることは、もうなくなった。
雪が付いている上に、写真を撮りながらだったので、差は開く一方だった。

振り返ると、マタエに3人組が到着したところだった。

さっき飯盛ヶ城(1067m)の鞍部で会った方々と思われる。

こちらは最後の難関(かな?)。

すでに、いくつも岩峰をクリアしてきたし。

ここまで来ると霧氷もエビの尻尾状態になる。

あとであの稜線を歩きます。

この眺めは、やはりここまで来ないと見られない。

しかも、この時期に来ないと。

お鉢の向こうに鶴見岳(1375m)も見えてきた。

鶴見岳は単独峰ではなく、北の方に家来を従えている。

あ、頂上だ。

マタエから17分、登山口からだと2時間8分かかった。

ほぼコースタイム通りで、飯盛ヶ城に寄り道したことを考えると、かなりの成績ということになる。

先行していた女性はすでにくつろいでパンか何かを食べていた。

「さすがですねえ」と声をかけて、カフェオレを飲みながらしばし雑談。

聞くところによると、彼女はもう日本の主だった山は登り尽くし、昨年はネパールの山にも登ったんだとか。
かなりのキャリアの人であった。
お鉢めぐりのことを聞いてみたら、「むずかしいところが2か所あるけど、ここまでほどじゃないから、せっかくだから楽しんでいらっしゃい」と言ってくれた。
「山と高原地図」に「ナイフエッジの難所」とあって、ちょっと不安だったが、その言葉で決心がついた。
頂上からの眺めももちろん撮影した。
北西は立石山(1059m)方面。茶色いカヤトが目立つ。

お鉢めぐりへの道。後で行きます。

お鉢の鞍部の向こうに鶴見岳(右端)とその連峰。

鶴見岳はちょうど剣ノ峰のすぐ左に見える。

さらに望遠で。

北へと延びる高速道路(大分自動車道)。

東峰の雄姿。

西にはサンゴの先に湯布院の町並み。

気温はほぼ零度。

頂上はわりと広い空間になっていた。

10数分休んで、西峰を後にする。ガスが流れてきたが、一瞬だけだった。

いざ、お鉢めぐりへ。

まずは当然ながら下り。

この岩峰は左を巻く。

雪がかなり積もっている。積雪後こちらまで来た人はいないようだ。

北側なので、霧氷で真っ白だ。

しかし、なかなか気持ちのいいものである。

標識などがあると、ちょっと安心。

右の縦の筋がこれから登る稜線。左は鶴見岳。

剣ノ峰(左)と東峰(右)。

こんな状態だと、雪のついた岩を触らなければならず、軍手がびっしょりになってしまったので、ゴアの手袋に交代。

写真を撮る時にいちいち脱がないといけないのは面倒だったが、それはまあ仕方ない。

一眼レフのカメラのバッテリーが昨日切れてしまい、今日はコンパクトカメラだが、こんな雪の岩場では邪魔で仕方なかっただろう。

かえって最初からコンパクトを使わざるをえなかったのは、よかったかもしれない。

西峰を振り返る。

旧火口(ウバガウジ)から突き上げる東峰。

剣ノ峰への岩稜。

お馴染み鶴見岳。

V字形のマタエ。

西峰の火口側斜面。

鞍部を過ぎて、登り返しに突入。

今、下ってきた斜面を振り返る。

西峰頂上部。

マタエがちょうど真正面。

女性が「2か所難しい」と言っていたところも、「ここのことかな」と思いながら、とくに困ることもなくクリア。

むしろ楽しいくらいだった。

ただし油断はせず、慎重の上にも慎重に。

北側斜面の樹林帯も霧氷で真っ白。

岩にはエビのしっぽが発達していた。

これなどは芸術品だ。

完全なモノクロームの世界である。

(つづく)
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