山と鉄

山歩き、乗り鉄、廃線・廃道歩き、廃村歩き、駅舎探訪などの日々を記録します

火打山・妙高山(中)

8月25日午後3時、火打山登頂。
百名山であるが、若者の2人組がいるだけ。いたって静か。
もう午後も遅いこんな時間だからだろう。
山頂は直径30㍍ほどの広場になっており、真ん中のケルンの中に石仏が埋もれている。
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30分ほど待ったが、ガスが切れないので下山を始める。

登ってみて思うのだが、深田久弥がなぜ、この山を百名山に数えたのか少々納得がいかない。確かに、妙高、火打、焼山とつづく頸城(くびき)三山の中で、火打が最も高い。
焼山は2400m、妙高は2454m、そして火打が2462mである。
北アルプスを除くと、日本海側では最も高い山だそうだ。
深田は「日本百名山」の中で、こう述べている。
「その悠揚とした姿にすっかり惚れてしまった眼を隣へ移すと、妙高や焼のキチンとした纏まりがかえって見劣りする」

しかし、これは火打を選ぶためのこじつけのように思える。
深田は間違いなく、妙高を先に選んだであろう。
そして火打も入れたいがために、先輩の妙高をけなすようなことを言ったのだ。

火打は古来より、街道から遠く、見過ごされてきたことは深田自身が認めている。
そんな山を「発見」して、ぜひすくい上げたかったのだろう。
でも、公平に見て、頸城三山から2つも採用するのはやり過ぎの感がある。
火打がダメというわけでは全くないが、妙高だけでよかった気がする。

ついでに言えば、高妻山を入れたのも賛同できない。
北信のあの近辺であれば、山容からしても歴史からしても文句なく戸隠だろうと思う。
標高が高妻より450mも低いことが大きな減点となったのだろうが、戸隠にはそれを補って余りある魅力がある。

火打の山頂からくっきりと北アルプスが見えたら、こんなことは思わなかったのかもしれないが。
火打が中腹に高谷池や天狗の庭という希少な湿原を抱えたすばらしい山であることは、あわてて付け加えておく。

さてさて、下山。
私の嫌いなピストンだが、今回ばかりは致し方ない。

途中、アサギマダラがアザミの蜜を吸っていた。
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こちらはクジャクチョウ。
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下るに従い、日本海側のガスが晴れてきて、雷菱(2276m)と呼ばれる火打山の支脈が見えてきた。立派な岩稜である。
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穏やかな山容の火打にも、こんな荒々しい一面があったのだ。

再び、天狗の庭に降りてくると、ワタスゲが傾いた日の光を受け、さっきより一層輝いている。思わず、木道に腰を下ろして、しばらく撮影会を開いてしまった。
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ヒュッテに近づくと、ものすごい嬌声が聞こえてきた。
例の団体さんである。テラスやベンチで酒盛り。もうビールの缶がいくつも空いており、みなさん大騒ぎだ。
山の恥はかき捨てか・・・と嘆息する。
楽しいのは分かる。しかし、ここは温泉ホテルの宴会場ではないのである。
静かに山を楽しみたい人の方が多い。
もっと想像力を持ってはもらえないものだろうか。

こちらはもう一度、水場へ行って、顔を洗い、部屋に入って寝室を整える。
ありがたいことに、ここは布団1枚分の幅が確保されている。
今日はほぼ満員のようだが、布団に2人詰め込むようなことはしていない。
両隣も単独の人のようで、うれしい。今夜は安眠できそうだ。

その隣の一人は、私と同じく笹ヶ峰から登ったそうだが、登り始めたのが8時で時間に余裕があったので、先に妙高に登ってきたのだそうだ。
「バテました」と笑っていた。

しばし歓談した後、私は1階食堂に下りて、壁に貼ってある高山植物の写真でお勉強。
メモ帳に絵と特徴を書きながら、区別しにくいものを整理していく。
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売店で、バッジと高山植物のイラストマップも買った。
そうこうしている間に夕食の時間。5時15分なので、わりと早い。

メニューはカレーライスとハヤシライスが食べ放題。
私はもともと下にいたので、早めに並ぶことができ、数少ないイス席を確保できた。
老夫婦と相席だった。
カレーはかなりおいしかった。ライスも結構盛ったので、それだけでお腹いっぱいになったが、ハヤシも食べてみたくなり、少しお代わり。
デザートのパイナップルの缶詰がヒットだった。

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(夕食後のひとときを楽しむ登山者たち)

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(夕暮れ、雲に包まれた焼山)

食後は火打山の四季と高山植物という2本のビデオが上映され、見ているうちに、どうしてももう1回火打山頂からの眺めが見たくなった。
よし、明日早起きして、もう1度行ってみよう。
日の出は5時過ぎなので、4時前に出れば十分。すぐ下ってくれば、6時の2回目の朝食に間に合う。天気予報は晴れ時々曇か霧とのこと。早朝は問題ないだろう。

スタッフに一応断ると、朝食は5時半のみで明日は2回目はないとのこと。
6時に戻って来られても、片づけた後になるというので、朝食はキャンセル。
昼食用にもらう弁当は明日の朝に受け取れるというので、それを朝食代わりにすることにした。

7:40就寝。布団が比較的清潔なので、シュラフは使わなかった。
さすがに、あの団体さんももうお休みのようだ。夜まで騒がれてはたまらない。助かった。
おかげで熟睡でき、3:30起床。
アタックザックで出発。
外はまだ真っ暗で、満天の星が輝いている。
東の空高く、オリオン座があった。こんな真夏でも、この時間には冬の星座が出ているのだ。マイナス1等星のシリウスの明るさといったら、金星並み。
夏に見る冬の大三角形もすばらしい。
カシオペア座は天の川にあったということも発見。
早起きは3文どころか、百万ドルの得の気分である。

歩き始めてすぐ、雨具を履く。上は防寒用にすでに着ていたのだが、やはり朝露が激しい。
暗い中をヘッドライトで歩くのは、あまり経験がない。
今年2月に天狗に登った時以来か。
そもそも、景色を見るのが目的で山歩きをしているので、基本的に夜は歩かない。
ただ、今回は昨日すでに歩いているし、帰りは明るいのだから問題はない。

それでも、何度もライトを消して、空を見上げ、星空に見入った。夜の山歩きも悪くない。
天狗の庭を過ぎると、火打の中腹に雲が細くたなびいている。
なんという幻想的な風景。ぜひ写真に撮りたいが、三脚がないので諦める。
最初はあせってさくさく歩いていたが、夜明け前に山頂に着いても意味がないので、ペースを落とす。

頂上に近づくにつれ、なんとガスが再び山頂を流れ始めた。
4:50登頂。残念ながらガスの中である。
2度登って2度ともダメかあとがっかりしたが、とりあえず日の出まで待ってみる。

東の空が赤く染まりだしたが、日はどこから昇るのか分からない。
このガスも太陽が出れば消えるのかもしれないが、こちらは6時までに下山しなくてはならず、そうのんびりもしていられない。
日の出を待たず、先着の2人と後発の1人を残してヒュッテに戻ることにする。

わずかに下っただけで、ガスの下に出、ちょうど御来光を見ることができた。
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妙高と黒姫(右)もガスの中から、うっすらと姿を見せてきた。
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本当なら黒姫の上に富士山が見えるのだそうだ。

朝霧の中のアザミも美しい。
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おお待望の北アルプス! 右が白馬三山、左手には五竜や鹿島槍を確認できる。
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今日はやはり湿度が高いようだ。日本海に近いことも関係しているのだろう。

こちらは百名山、例の高妻山。
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振り返ると、火打山はもう5時半だというのに、まだ薄いヴェールをまとっている。
待っても無駄だった。と肩をなで下ろす。
ところがその3分後。ガスは消えてしまった。
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ナンタルチア~!
しかし、私の性分では40分も粘れなかっただろう。
結局、のんびり日程で1回しか登らないあの団体さんたちが最後に笑うことになるのだ。とほほ。
まあいい、気を取り直して前進。あの一糸まとわぬ妙高を見よ。
あそこから、360度のパノラマを楽しめばいいのだ。がはは
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ああそれにしても、この青空。無念じゃ
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と思いきや、またしてもガスが。背後にある影火打が一気に雲に隠れてしまった。
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その間、わずが3分。ほんとにめまぐるしい。

見れば、その1分後には火打にも再びガスがまとわりついてきた。
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しかし、結局6時には完全に雲もとれた。ようやく安定期に入ったようだ。

一喜一憂してしまったが、6:10ヒュッテに到着。
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お弁当のレトルト釜飯を受け取り、パッキングをして6:30に出発。

静かに噴煙を上げる焼山を後に見て、妙高へ向かう。
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道は右だ。
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まずは茶臼山への緩やかな登り。
空には秋のような雲が広がる。
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茶臼山には25分ほどで到着。山頂というより峠という印象。
それでも標識は一応あった。
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この先間もなく、黒沢岳と外輪山に挟まれた湿原が眼下に広がる。
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黒沢池である。
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道端のオヤマリンドウの青がまぶしい。
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この花はめったに開かない。いつも、つぼみのような状態のまま咲いている。

池のほとりには黒沢池ヒュッテがある。そこまで標高差170mほどを下る。
途中、昨日騒いでいたのとは別の団体さんを抜かす。

なんと、日本海からこちらにもガスが襲ってきた。
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まさか、妙高までは覆い隠してしまわないでしょうねえ。
昨日はずっと大丈夫だったので、今日も大丈夫でしょう。

7:15黒沢池ヒュッテに到着。玄関前のベンチを借りて朝食とする。
さっき受け取ったレトルト釜飯。本当は、今朝炊いた御飯のおにぎりか何かを期待していたのだが、まあ文句は言えない。通常、小屋の弁当は1000円だが、ここは500円で済んだのだから。
一応、器に移して味わっていただく。

変わった形のヒュッテの中を見学させてもらおうと思い、扉を開けたら、人相の悪いじいさんが「何の用?」と、怒った調子で言う。
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気の小さい私はつい「あ、あの、中を見学させてもらおうと思って」と言いながら、ろくに見ることもできず、引き下がってしまうが、後でムラムラと腹が立ってくる。

どうも山小屋の人の中には、客を敵視する傾向のある人が多いのだろう。
想像するに、近年の登山客のマナーの悪さや常識のなさが背景にあると思うが、山小屋も変わらなければいけない。
小屋だって客商売なのだから、そういう客も含めて生活が成り立っているはずである。
昔のようにはならないからと言って、不機嫌になっているだけでは何も変わらない。
まあ、苦労はよく分かります。

さて、腹もふくらんだので出発。
これからは外輪山を直登することになる。標高差150m。
途中、朝食を食べている間に先に行ったさっきの団体さんに追いつく。
道が狭く、追い抜ける状況ではない。
観念して、このペースで付いていくしかないかと思ったら、突然ショートカットコースが出現。これを一気に登り、彼らの先に出ることができた。これはラッキー。

外輪山の稜線である大倉乗越(2150m)からは正面に、高さ400mの巨大な中央火口丘たる妙高の山体がそびえる。
しかし、なんとガスがもう漂っている。まだ8時前だぜよ。
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暗たんたる気分。火打も妙高も不発に終わるのか・・・
眼下の長助池がガスに巻かれていなかったのが救いか。
DSC_2532.jpg

こうなったら、とにかく先を急がなければならない。

つづく
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コメント

ナンタルチア〜!笑えました。
一瞬で景色が変わるところが山登りの魅力の一つですね。

  • 2012/09/12(水) 15:52:34 |
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