【2016年8月7日(日)】南アルプス南部
千枚小屋から4時間半ほどで、椹島まで下ってきた。
どんなところなのか、とても興味があった。
かつては林業の拠点だったのだろうが、今は完全な登山基地になっていた。

まずは開発者である大倉喜八郎の記念樹。

88歳の時に籠で赤石岳に登ったという大倉翁の登頂記念碑。

東海パルプ、東海フォレストの創始者でもある。

左手に、南アルプス白籏史朗写真館。時間がないので入らなかった。

大正から昭和初期にかけて、ここで800人近い人々が林業に従事していたらしいが、その宿舎のひとつ「旧クラブハウス」が保存されていた。

トイレに寄って顔を洗う。

やはり登山者で大にぎわいだ。

とにかく、レストハウス椹でバスの整理券をもらう。確か70番代だった。

バスの時間まで30分近くあるので、とりあえず休憩。
このあと車を運転しないといけないので、私は400円のソフト。

O君は運転から解放されたので、生ビールを2杯飲んでかなりいい気分だ。
私はじっとしていられない性格なので、あちこち探検に歩く。
これはレストハウスの中。なかなかおしゃれな感じ。

マスクメロンサイダーも飲みたいなあ。

椹島ロッジはものすごくデカい。
宿泊受付はこんなに地味だけど。

別館入口も小さいけれど。

宿舎は何棟もある。

こちらがロッジの正面。

東海フォレストの事務所も兼ねている。

広場がある河原の方に行ってみた。

暑いので、誰も日向にはいない。

レストハウスを東から。

東海フォレストの送迎バス発見。3台ともある。我々が3泊4日で登っている間に、修理に出していた1台が戻ってきたようだ。

ここから鳥森山(1571m)に2時間半でピストンすることができる。
さすがに今回はパスだけど。

由来まで書いてあった。

そうこうしている間に、バスの時間がやってきたので、レストハウスに戻る。
我々は3台目だった。

一番後ろの席で、となりの人が足を開いて座っているので狭くてたまらなかった。

重いザックを1時間も膝の上に乗せていたので、かなり疲れた。
畑薙に着くと、今日も駐車場は車でいっぱい。

百間洞山の家で雑談をかわしたおじさんがいたので、ご挨拶。
まるまる3日間置きっぱなしだった車は猛烈に暑かった。

ザックを積み込み、サンダルに履き替えて、やっと文明の世界へ。
本日の宿、白樺荘には15分ほどで着いた。

今日帰ろうと思えば十分帰れるのに、O君が後泊してビールを飲まないと気が済まないのだ(笑)

ここからは茶臼岳(2604m)が真正面に見えた。

部屋は一番奥の「前岳」。ちょっと地味だ。

同じ時間のバスに乗ってきた登山者たちが、続々マイカーで下りてきて、みんなここに立ち寄るので、この時間はお風呂が混雑する。なので、我々は先に昼食をとることにした。

私はここでやっとビールにありつけた。

つまみになるよう、食事はそばにした。
食後、頃合いをみて風呂へ。
次のバスとのはざまになるので、かなり空いていた。

ちょっと、おふざけ。

露天風呂の正面に畑薙第二ダムのダム湖と茶臼岳が望めた。

その右には1869m峰。

風呂上がりに、ぶらっと売店を冷やかす。


さっぱりした後は部屋で飲み直し。
ベッドに横になりながら、9月中旬の3連休の予定を考える。
北海道在住のH君のために富士山はどうかと提案。
私は行ったばかりだから行かないけど。
(結局、天候不順のため中止になった)
夕食まで、たっぷり時間があるので、ついうとうとしてしまった。
夕方になって、もう一度風呂へ。
今度は元気なおじさんと、露天風呂で一緒になり雑談。
夫婦で来ているが、奥さんはこの宿に置いて2泊で光岳に登ってくる予定だそう。
どの山も最短距離で登る主義なんだとか。
北アルプスに行くときは松本に滞在して、天気がいい日に出かけるそうだ。
リタイヤした人じゃないとできない芸当だ。
晩飯のメインは馬刺し。超豪華というわけではないが、適量でおいしかった。

またビールと、今度は日本酒もいただいてしまった。ここのオリジナル「白樺荘」。

マッサージ器で少し体をほぐしてから、部屋に戻る。

翌朝は10時の出勤を目指し、4時半起きなので、早々に寝てしまった。
【行程】2016年8月7日
千枚小屋(5:01)~駒鳥池(5:28)~見晴台(6:08撮影6:15)~蕨段(6:24)~清水平(6:48休憩6:57)~小石下(7:39)~1437mピーク(8:25休憩8:33)~滝見橋(9:26)~椹島(9:41)
※所要時間:4時間40分(歩行時間:4時間15分)コースタイム:4時間50分
※登った山:1座(小石下)
※歩行距離:9.3km
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【2016年8月7日(日)】南アルプス南部
千枚小屋から下山中。小石下(1586m)の先で林道に一旦出て、再び登山道へ。

かなりの急坂だ。

5分ほどでやや平らなところに出た。

この先は尾根の左側をトラバース。

桟橋を渡る。

10分ほどで下り切ったが、直進の道は通行止め。

この先は登山道崩落のため、標高差60mの山を越える迂回路が設けられているのだ。

その登りが結構な岩場。

「岩頭見晴」というところだ。

ここで、逆方向から来た夫婦とすれ違う。

「せっかく登ったのに下りとは」と、ぼやいていた。
こっちは「せっかく下ったのに、登りだ」。
でも「見晴」というだけあって、確かに展望が得られた。

これは悪沢岳(3141m)。

中岳(3083m)もかろうじて見えた。

随分遠くなったものだ。

さらに激しく登る。

迂回路なので容赦がない。

この古いハシゴは通行止め。

こちらにさらに迂回する。

ほんとに大丈夫かね。

岩と木の根を乗り越えて進む。

最後の最後に、この登り返しはさすがにきつい。

そろそろ頂上かな。

おお、やっと着いた。

ここは標高1437m。せっかくのピークなのに、山名板がない。

鉄塔下でしばし休憩する。

3日前に買って、まだ食べていなかった行動食。
10分弱休んで出発。

出発するとき、O君が別の方向に進もうとしたので、「こっちじゃないか」と声かけ。
まあ言わなくても、すぐ気づいただろうけど。
5分ほどなだらかに下った後は、猛烈な急坂。

一気に250m下る。


こんな階段もときどき出現。

だんだん、大きな岩がゴロゴロしてきた。


標高1300m地点を通過。

畑薙7時発のバスで登ってきた人だろうか。

時刻は9時前なので、ちょうどそんな頃合いだ。続々と登ってくる。

猛烈なゴーロだ。

やっと露岩帯を抜けた。

長い下りが続き、O君は若干足が痛いみたいだ。

登山道を押し流した崩落地点に出た。

う~ん、かなり大規模だ。

これは、さすがに強行突破はできなかっただろう。

足元がちょうど崩落した切れ目。

さて、ここでやっと旧来の登山道に戻ることになる。

まだまだ先は長い。


何人もの登山者とすれ違う。

今日はいい天気なのに、ずっと樹林帯だから、ちょっともったいないかも。

おお、やっと谷底が見えた。

標高も1100mまで下ってきた。

千枚小屋から一気に1500m下ってきたことになる。

下り切って、やっとお待ちかねの大吊り橋。

歩く幅が極端に狭い。

足元はこんなにスカスカだ。


でも、意外に怖くない。景色を撮る余裕はたっぷり。

ずっと上から見下ろしていた奥西河内だ。

このあたりには赤いチャートはほとんどないようだ。

当たりまえだが、実に水がきれい。

無事渡り終えました。

ここからは奥西河内の右岸を進む。

ミズナラの古木。幹回り4mもある。

この石垣が林業関係の遺跡だろうか。

道はやっと平坦になった。O君も足の痛みを我慢していただろうから、ひと安心だろう。

これは怖い。

まぶしいほどの清流。

林道に出る手前のトラバース道で、人ひとり通るがやっとのところなのにカップルが立って何かを食べていた。
私どものほかに向こうからも人が来るし、すれ違うのが大変だった。
「なして、わざわざあんなとこで飯を食うんだ」とO君は激怒していた。
全く不思議だ。しかも彼らは出発して間もなくのはず。理解に苦しむ。
ムカムカしながら桟橋を進む。

おお、滝見橋が見えた。やっと林道だ。

ここで大井川本流と合流する。

右手に涼し気な滝が出現。

水も汲みたくなるわ。

滝の水滴がついちゃった。

9時半前に林道に出た。灼熱の太陽に照らされ、暑い。

左折すると二枚小屋方面。いつか泊まってみたい。

この橋は1970年に架設されたようだ。

ここで登山道とはおさらば。長い旅だった。

古い登山届ポストが残っていた。

炎天下、まだしばらく歩かなければならない。

滝見橋を後にする。

努めて、日蔭を選んで歩く。

日蔭のないところは仕方がない。

15分ほど歩いて、椹島への分岐に着いた。


バス代を惜しんで、自転車で来る人もいるようだ。見上げた根性!

再び登山道に入り、さらに下る。

フシグロセンノウ。

私はO君を置いて駆け降り、下に鎮座する井川山神社へ急ぐ。

参道が長く、随分遠回りだ。

でも、柏手を打って、無事下山できたことに感謝した。

(つづく)
【2016年8月7日(日)】南アルプス南部
千枚小屋から椹島に向かって下っている。

深い樹林帯だが、たまに木々の隙間から荒川三山を見ることができる。

左は前岳(3068m)、右は中岳(3083m)。
自然の石仏?

標高2300mまで下ってきた。3日ぶりだ。

一直線の登山道。これは木馬道を踏襲しているのだろうか。


まっすぐ下っていく。

いい感じの古い道標。

この先からは木馬道は別ルートのようだ。


登山道の方は少しえぐれている。


相変わらず、樹林が濃く、薄暗い道だ。

木の根も張りだしてきた。

お、赤石岳(3120m)。

これは荒川前岳。

中岳は避難小屋も見える。

ほとんど瞬間芸だった。すぐに視界は閉ざされる。

比較的新しいかわいい標識もある。

このルート唯一の見晴台に近づいたあたりで、左の上の方から人の声がしてきた。
登っていく踏み跡があるということは、見晴台のほかにもビュースポットがあるのか。
でも、上を見ると、標識があったので、もう「見晴台」に着いてしまっただけだった。

すぐに登り口が出てきて、それを登ると、声の主がいた。
さっきの踏み跡は見晴台への近道だったわけだ。
見晴台というだけあって、素晴らしい眺めだ。

荒川三山がばっちり。

左は悪沢岳、右が千枚岳。

悪沢岳のアップ。

千枚岳単独。

前岳と中岳。

荒川小屋もはっきりと見える。

赤石岳(左、3120m)と小赤石岳(中央、3081m)。

赤石岳のアップ。手ぶれ注意。

小赤石。

見晴台は林道との接点でもあった。

関係者は車でここまで来られるわけだ。

掘っ立て小屋があったので、トイレかと思って行ってみたら、中は空っぽだった。

景色も満喫したことだし、とくに休憩はせずに出発。

すぐに2100m地点を通過する。

この先、蕨段という地名のところに2074mの三角点があるようなのだが、地形図に記された徒歩道とはずれた尾根上にあるので、近くまできたあたりで、登山道を外れ、小高い尾根少し歩いてみた。

でも見つからないので諦めて、登山道に戻る。

間もなく、三角点は登山道上に出現した。

どうもおかしいので地図ロイドを見てみたら、歩いてきた軌跡は2250m地点あたりから、地形図の徒歩道とは大きく離れていた。
登山道がそんなに新しいようにも思えないし、不思議でならない。
いずれにしても、この三角点のある場所が「蕨段」とされている。

ここがちょっとしたピークだったら、「登った山」に加算しようかと思っていたのだが、全くピークではないし、「段」という言葉が「平らなところ」という意味であることを知っては、もう論外になってしまった。

ここも休憩はせずに通過。

このあたりは湿地の記号があるだけに、ぬかるみも所々にあった。

ダケカンバのコブ病についての説明。パッと見、近くには顕著な瘤はなかった。

「段」というだけあって、かなり平らだ。

「蕨段」を通過すると、再び下り始める。

いきなり大きな岩が目立ち始めた。



傾斜もそこそこ急である。

この「FH」や「M」の意味がよく分からない。

オオシラビソの森をさらに下る。

「近道」と読めるが、どこに通じる近道なのか、どっちが近道なのか全く不明。

そうこうしているうちに、標高1900mの清水平に到着。

「水場2箇所あり」と「山と高原地図」には書かれているが、1つしか見つけられなかった。

かなり暗いところで、また手ぶれしてしまった。
ここで、ひと息入れる。

O君やはり足が痛いようで、靴を履き直していた。
私もちょっと気になるところがあったので、靴下を脱いで状況を確かめた。
靴ずれしないようにしなくては。
10分ほど休んで出発。

この先も地形図の徒歩道とはずれたまま、どんどん下っていく。

このあたりヤマイワカガミの群生地らしいが、もうすでに終わっていたようだ。

代わりに、ベニテングタケが見送ってくれた。


傾斜がなだらかになった。

常緑の植物たち。名称は不明。


風車のようなシャクナゲ。

もう日が昇って2時間過ぎたというのに、森の中はなお暗い。

1660m地点あたりで林道を横断する。

車両には、「止まれ」標識で注意を喚起している。

この林道は本当に林業関係の車がよく通るのだろう。

横断して再び登山道へ。

「新道」の標識が落ちていた。

なるほど、さっき「近道」と思ったのは「新道」だったのだ。
地形図の表記は「旧道」のままだから、ズレが生じたわけか。
それにしても、「新道」ができてから、かなり経っているのだから、地形図も早く更新してもらいたいものだ。

キノコくん。

なんか、やっと少し明るくなってきたような気がする。


小屋から2時間40分で、小石下(1586m)に着いた。

ここは三角点もあるし、ちょっとした高まりなので、本日唯一の「登った山」に認定。
ここで山口大学医学部のTシャツを着た学生グループが休んでいた。山岳部だ。

椹島までは、あと1時間半。9時過ぎには着く計算だ。

ここもとくに休憩はせず通過。

この先は徐々に傾斜を増し、200mを一気に下ることになる。

階段を下って一旦、林道に出た。

分かりやすい標識。60mだけ林道を歩くらしい。

その通りにする。

久しぶりに青空を見た。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
千枚小屋に到着して、離れの百枚小屋でビールを飲んでいる。

小屋ではもう休んでいる人もいて、あまり大きな声ではしゃべれない。
ドアを開けたまま歓談しているうちに、「寒くなってきた」とO君が震えだして、シュラフに潜り込んでしまった。
食事は18時なので、まだ随分時間がある。
私もしばらくシュラフの中で休んでいたが、電波が通じないので、することもなく暇だ。
雨が上がったようなので、探検に出かけた。
百枚小屋はこんな形をしている。

月光荘という別の小屋もあったが、これはどういう方々が使用するのだろうか。

本棟に至る間にもお花畑がある。

坂を下ると、テン場への分岐。

これはトイレ。

小屋前の広場にはベンチがあったが、雨で濡れて誰も使っていない。

気温は16℃。動いていないと寒いくらいだ。

本棟の寝室を見学する。なんと3段になっている。

食堂には「準備中」の札がかかっていたが、もう17時の方々が食べ始めていた。

本棚にこんな本を見つけた。奥駈道を縦走する時にはぜひ買い求めよう。

雨も止んだので、外でくつろいでいる人が何人かいた。

さて部屋に戻ろう。

お花畑にはトリカブトだけじゃなく、イブキトラノオも咲いていた。

もちろんマルバダケブキも。

テン場まで探検に行こうとしたら、荷揚げ用のケーブルを発見。


さらに奥へ。

テン場は我々の小屋よりさらに遠かった。

まあ安いのだから仕方あるまい。

雨が降ると、テントは重くなるが、それも覚悟の上だろう。

雨上がりなので、道がとても滑る。

サンダルなのでなおさらだ。

引き返して、もう一度、本棟へ。

改めて見ると、きれいな小屋だ。

生ビールを飲みたくても、百枚小屋まであんなに離れているんじゃ持って帰れない。

これが水場。

いったん部屋に引き上げる。


18時に近くなったので、O君と一緒に再び本棟へ。
やっと夕食だ。

今夜の食事の売りは鶏肉のトマトソース煮だったが、やや肉が少ない。
イモ系がやけに多い印象だった。でも味はまずまず。
食後、外に出ると、気温はさらに下がって14℃。

今はガスっているが、明日はこの正面に富士山が見えるらしい。楽しみだ。

エゾシオガマみっけ。

薄暗くなった道を部屋に戻る。

まだ、18時半だが、することもないので、シュラフに潜り込み、間もなく眠りに落ちた。

夜中、と言ってもまだ10時半ごろ、トイレに起きて、個室ですこし粘った。
戻ると、O君がいない。
後で聞いたら、ちょうど彼も目が覚めて、裏のベンチでしばらく星を見ていたそうだ。
その後、なかなか寝付けないので、通信はできないが、スマホをいじって暇つぶし。
目が疲れたところで再び寝た。
結構寒かった。この寝袋は夏でも高山ではもう使えないのかもしれない。
【行程】2016年8月6日
百間洞山の家(4:50)~百間平(5:50休憩5:55)~大斜面下コル(6:40)~赤石岳(7:43探索8:09)~東尾根分岐(8:23)~小赤石岳(8:35撮影8:45)~大聖寺平(9:30)~荒川小屋(10:07昼食・探索10:51)~荒川前岳(12:05)~中岳避難小屋(12:23休憩12:29)~悪沢岳(13:26休憩13:46)~丸山(14:13)~千枚岳(14:49休憩14:59)~千枚小屋(15:20)
※所要時間:10時間30分(歩行時間:8時間35分)コースタイム:10時間
※登った山:8座(赤石岳、小赤石岳、小赤石岳の肩、荒川前岳、中岳、悪沢岳、円山、千枚岳
※歩行距離:14.0km
【2016年8月7日(日)】南アルプス南部
3時半くらいから回りがごそごそし始めたので、こちらも4時前に起床。
パッキングを完全に済ませ、ザックを担いで本棟へ。
トイレに行きたくなったので、寄った。
今日は踏ん張ることなく、気持ちよく出た。
まだ夜明け前だが、富士山のシルエットが見えた。

ちょっとガスがうるさいが、本当に真正面だ。

4時半の食事にみんな並んでいたが、朝は1回だけということなので、全員入れると考えて、並ばず、ゆっくり富士山を眺めていた。
4時半になって食堂の扉が開いてから、中に入る。
まあ通常の朝食だ。

食後、外に出ると、雲が落ち着いていた。

雲海の上に富士山がきれいに浮かんでいる。

気温はさらに下がって11℃。

しばらく待っていると、御来光も拝むことができた。

皆さんも、それを待っていた。

富士山とは随分離れた位置から昇った。

久々に気持ちのいい御来光だった。

小屋もモルゲンロートで真っ赤に染まっている。

歯磨きをして、ちょうど5時に出発。

すぐに2500m地点を通過。

樹林帯の中を延々と下る。

小屋より下にもマルバダテブキ。

ところどころ大きな岩が転がっている。


シラビソの原生林。


林床はシダ。


管理道路なるものと交差。

これのことかな。通行止めのロープが張ってある。

「荷揚げロープウエイの下を通る」と「山と高原地図」に記載があったが、気づかないまま通り過ぎてしまった。

間もなく「木馬道の起点の跡」の表示があった。

このあたりは明治時代に伐採が行われていたそうである。
これは登山道だが、木馬道と一致しているのだろうか。

それとも、ちょっと外れている、この「道」のことだろうか。

一瞬、木々の隙間から荒川三山が見えた。

ここは木馬道と関係あるのかな。

この「現在地」という表記はあまり意味がない気がする。

小屋から30分かからずに駒鳥池に着いた。

「ヒンカラカラカラ」という馬のような鳴き声なので、駒鳥というらしい。

ちょっと脇に入ると、その池があった。

コケがすごい。


休憩はしないで、先を急ぐ。

O君は見学しないで先に行ってしまったのだ。

これは木馬道跡っぽい。

と思ったら、古い伐採跡であることを示す看板があった。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
悪沢岳(3141m)から丸山(3032m)を経由して、千枚岳(2880m)に向かっている。

悪沢岳も随分遠くなった。

足元にオンタデ。

岩の間にはイワツメクサ。


右手に小赤石岳(3081m)。

スパンと切れた千枚岳(2880m)の南面。

岩壁の下を巻く。

タカネナデシコ。


ここは「山と高原地図」に「お花畑」とあるあたりだ。

イブキジャコウソウ。

ノラニンジンとタカネマツムシソウ。


沿道にトリカブト。

白いのはタカネビランジ。


地面にはいつくばっている。

千枚岳の頂上までに、いくつかの岩稜を越えなければならないようだ。

右手は鋭く切れ落ちている。


そそり立つ岩峰。

ここは左を巻く。


いよいよ岩登り。

疲れた体には最後の試練だ。

タカネビランジがエールを送ってくれる。

丸山(3032m)を振り返る。

後続部隊の姿が見えた。

今日の赤石岳は隠れそうで隠れない。

荒々しい南斜面。


一旦丸山に隠れていた悪沢岳が見えてきた。

1つ目のこぶを越える。


私も岩に取り付く。

ここはどうにか登り切った。

その先はロープでトラバース。

最初のピーク通過。

悪沢岳がまたガスに隠れた。

タカネマツムシソウの群落。

2つ目のピーク。


これは巻くようだ。

助かった。

巻いた分、登り返し。

また悪沢岳が姿を現した。全く出たり入ったりだ。

このあたりはタカネビランジの天国。

ガレ場を通過。

虫もカメラの前を通過。

3つ目のピークの上に立った。

丸山が大きい。やはりこちらから見れば、名を与えるのに値する山だ。

ありゃ、ふいに千枚岳に着いてしまった。

丸山から35分。コースタイムより5分早かった。

ここまでかなりしょっぱい岩場もあり、なかなか面倒だったが、無事に着いてホッとした。

取りあえず、ここでしばし休憩。


視線を南に向けると、小赤石の向こうに赤石岳が姿を現した。


10分ほどで出発する。

ここから千枚小屋までは250mほどの下り。

コースタイムは30分だ。時刻はすでに15時。かなり遅くなった。

悪沢はまたまたガス。


あの森の中のどこかに千枚小屋があるはず。

奥西河内の深い谷がずっと続いている。

右手は相変わらずの岩場。

道は若干ザレていて滑りやすい。


O君の足がまた痛そうなので、私が先に下りて、宿泊の手続きをしておくことにした。

となると速足で進む。

階段もなんのその。

標高が下がって、草木の丈が高くなってきた。

眼下に樹林帯が迫る。

間もなく、その樹林帯に入った。

二軒小屋への道との分岐を通過。

早く小屋に着いてしまいたい。

こんなところは、つい走ってしまう。

あ~赤い屋根が見えた!

こうなったら一目散。

でも写真を省略したりはしない。

ダケカンバの林に突入。


マルバダケブキ。


マルバの間から顔を覗かせているのはトリカブト。

お花畑はネットで保護されている。

シカの食害がひどいのかもしれない。
さらに下ると、トウヒの森に。

ふ~、小屋はもうすぐ目の前だ。

水場はわき目も振らず通過。

こちらは明日下る道。

とうちゃこ~~~。

コースタイム30分のところ、20分で駆け下りてきた。
でも、本日の行動時間は10時間半に及んだ。
まずは宿泊の手続き。
1泊2食9000円だが、シュラフ持参なので、500円引きで8500円。
でも、指定された宿泊場所は本棟からかなり離れた千枚ならぬ百枚小屋。
「こっち(本棟)はすでにいっぱいなのか」と聞いたら、こちらは寝具のない人用だとのこと。
手続きの最中にO君到着。一緒に、百枚小屋に移動する。

小屋への最後の登りが疲れた体にはきつかった。本棟から5分もかかった。
しかも、ここには備え付けのサンダルもないし、O君はご機嫌ななめ。
ビールを買いに行くのも、食事に行くのも、トイレも水場もかなり歩かないといけない。
これは500円を惜しまず、本棟にすればよかったと反省。
でも、こちらの小屋は先客が4人しかおらず、スペースはかなり広く使えた。
とにかくぬれタオルで全身を拭いて着替える。
落ち着いたところで、O君がビールを買ってきてくれた。今回は2人とも500cc。
小屋の裏のベンチで乾杯しようとしたら、その途端、雨が降ってきたので、あわてて小屋へ撤収。なんかげんなり。
雨を眺めながら、しんみりとビールを飲んだ。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
午後1時半前に悪沢岳(3141m)に登頂。

岩また岩の織りなす頂上の壮大な景観に圧倒された。

休む前に撮影に専念。

ここは岩でできた鳥海山の山頂に匹敵するものだった。

赤石山脈だけあって、赤いチャートが目立つ。

ケルンを形成する石も一つ一つが大きい。

気が済んだところで、腰を下ろして一服。

それにしても今日は長い。今宵の宿、千枚小屋まではまだあと1時間半もかかる。

20分近く休んだところで、団体さんもやってきたことだし出発。

よろよろと歩き出す。

ペンキに従って、岩の上を進む。


前方に見えるのは丸山(3032m)。これでも3000m峰だ。

見えなくならないうちに、頂上を振り返っておく。

とにかく歩きにくい。

でも、男は黙ってO君の後をついていく。

ガスがまた出てきた。

向こうに猿の顔のような岩が見える。

派手な矢印。


豪快な景観はいつまでも続く。


いやいやシャッターを押す指が止まりません。


奇岩もあちこちにある。


巨岩の脇を通過。

この岩がさっき見えた猿岩(命名・私)だった。

猿岩を振り返る。

徐々に高度を落としていく。


こちらを赤石岳と呼びたくなるほど、岩が赤い。

岩場が複雑に入り組んでいる。


カメラのバッテリーがなくなって、さっきコンパクトに変えたばかりだが、かえってよかったかもしれない。大きい一眼レフだと歩きにくかったろう。

これだけ足場が悪いと悪沢岳という名前も納得できる。前言撤回。


こんな緑がありがたく感じるほどだ。


つい登りたくなってしまう岩には×印で警告。

赤と黒ならぬ赤と青。

やっと露岩帯を抜けたかな。

ちょうど日も差してきた。

道も道らしくなった。

しばし穏やかな稜線を行く。

もちろん振り返りながら。


しかし、岩稜が終わったわけではない。


よくまあ、こんなところを歩いてきたものだ。


ちょっとした登り返し。

青空がうれしい。


左手、北側の眺め。

やや平らなところがある。

こちらは再び露岩帯に突入。

それでも、ちゃんとした道があるのでありがたい。


岩の間からウサギギクやミネウスユキソウ、イワギキョウが覗いていた。

ちょっと日本離れした景観だ。

この緑はハイマツではなくツツジの仲間かな。

ガレ場を越えて。

山頂方向を振り返る。ガスもなく、ちゃんと見える。進むことに決めてよかった。

丸山へのなだらかな下り。

こちらはハイマツ。


やっと平和な道に出そうだ。

しかし、またしてもガスが迫ってきた。

頂上部最後の岩。

あとは丸山へ一直線。

右側にも平らな地形。

後ろ。

あれも山の一つなんだなあ。

左のくぼ地。これもカールの一種なのだろうか。

頂上付近はガスをまとってきた。まあ、また一瞬だろう。


こちらはガスじゃなくて、よかった。

頂上に後から着いたグループも下りてきた。

空が高い。

あっという間に丸山に着いてしまった。

とてもピークとは思えない。

「山と高原地図」には確かに載っているが、全く意識していなかったので、儲かった気分。

前方には千枚岳(2880m)が初めて姿を現した。


小腹が空いたのでチョコバーを食べながら歩く。

取り出している間に、O君がスタスタと行ってしまった。

しばらくは高原状態の道だ。

ところどころ地肌が露出している。

実に歩きやすい。

いよいよ本格的な夏雲が湧いてきたぞ。


それに追われるように先を急ぐ。

ハート形の穴あき雲。

丸山を振り返る。

その左に悪沢岳。

もう2時を過ぎたというのに、まだ登ってくる人がいる。

中岳止まりなのか、荒川小屋まで行くのか。

ザックを片方の肩にしかかけていないが、たぶん健脚なのだろう。

と思ったら、ザックを下ろしてしまった。何か取り出すだけだったみたいだ。

右手に小赤石岳(3081m)。

この方は、手を後ろに組んで、のんびり歩いていたが、ちゃんと宿までたどり着けるのだろうか。

大した傾斜でもないのに、うねうねしながら下っていく。


丸山からは130mほど下ることになる。


はい、そうしております。

千枚岳の頂上に3人ほどいるようだ。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
荒川中岳(3083m)から悪沢岳(3141m)への鞍部近くまで下ってきた。

左には深い谷が刻まれている。魚無沢。これも大井川の源流の一つだ。

右手の斜面。

鞍部のこぶをいくつかトラバースする。

そのうちの一つ。

道はわりとしっかりしている。

と思ったら、全然平らじゃないところも。

あそこまで標高差200mしかないとは、とても思えない。

ここも十分、岩の殿堂と言っていい。

振り返ると、トラバース道の向こうに中岳の避難小屋が見えた。

このトラバースは結構長い。

斜面にはタカネマツムシソウ。


タカネナデシコも咲いていた。


トリカブトも交えて、青系の花に囲まれた道だ。

ミネウスユキソウ。

さあ、いよいよ悪沢岳への登りが目の前に迫ってきた。

しっかり全容も見えている。

頂上付近も岩だらけだ。

まずはO君が、第一歩を記す。

私は登る前に最低のコルで中岳をもう一度振り返る。

悪沢岳の斜面。

もういい加減疲れているのだが、登攀意欲が高まる。

アルペンムードたっぷりだ。

ちょっと登るだけで、景色は大きく変化するので面白い。

右手にはいつも赤石岳(3120m)。

中岳が初めて大きく見えた。

快調に登る。

鞍部の南斜面。

おお、中岳の後ろに前岳(3068m)が見えてきた。

ほとんど針の山のようだ。


我らの応援団はシコタンハコベ。


黄色い声援をくれるのはミヤマキンバイ。

こうやって、歩いてきた軌跡を確認するのは大好きだ。

しかし、この先はさらに急登。

岩登りの様相を呈してきた。

尖った岩に丸い岩。

中岳がめちゃめちゃ大きい。

その稜線。

中岳と赤石岳。

一気に針の山まで登ってきた。


左手に小河内岳(2802m)。

あ、とうとう中岳にも雲が。

ええと、右ですね。

周囲はこんな状態。


うへ、もう頂上?

まず、O君が突撃。

見下ろすと、こんなふうに見える。

やはり、さらに先がありました。

もう終わりかけのタカネヒゴタイ。

ガスに突入。

やはり頂上は真っ白かな。

ん、そうでもないか。

どうも一喜一憂してしまう。

これだけ見えれば十分だ。

急登の後は、なだらかなトラバース。

岩稜が次々に現れる。

でも、さっきよりは平和な登りになった。


頂上はわりと近いとみた。

再びタカネシオガマ。

イワツメクサ。

言うまでもないけど、ハイマツ。

おお、あれが頂上か!

まわりにはミヤマコゴメグサの大群落。

イワギキョウも満開。

さっきのはニセピーク。もうひと越えだった。

ガスが瞬く間に消えてくれた。

悪沢岳から北に延びる稜線。

これは、どこだっけ。

頂上へもうあとわずかというところでカメラのバッテリーが切れた。
前日取り換えたばかりなのに、1日しか持たなかった。
まあ、撮り過ぎと言えば、撮り過ぎなんだけど。
でも、予備のバッテリーも使い果たしてしまっては、もうカメラを代えるしかない。
一眼レフからコンパクト・デジカメに選手交代した。
実はこのデジカメは代機のようなものだ。
四国で新しいコンデジを落として壊してしまったので、今修理に出している。
なので古いやつを引っ張り出してきたのだ。
SDカードのメモリーはたくさんあるのだが、このカメラのバッテリーが今日明日持つかどうか。
さすがに、こっちの予備バッテリーはないのだ。
切れてしまったら、スマホに頼るしかない。
こちらはバッテリーの予備も持ってきてある。
というわけで、頂上は目前。

カメラを取り換えている間に、O君はあんな先まで行ってしまった。

速足で後を追う。

とうとう塩見岳も雲に隠れてしまった。

振り返ると、後ろもガス。

すれ違ったお兄さんもすぐに離れて行った。

頂上部は岩が積み上がっている。

これを乗り越えれば、いいのかな。

どこを登ってもOK。

お、標柱が見えた。

当然、O君が先に着いていた。

13時半前に登頂。

コースタイム1時間のところ、なんと30分で登ってしまった。
(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
正午ちょうどに荒川三山の稜線に乗った。
(

O君とは一旦ここで分かれて、私だけ前岳(3068m)に向かう。

ザックをデポしてもよかったが、大した距離ではないので背負ったまま行く。
前方に荒々しいピークが見えるが、あれは前岳山頂ではない。

この方はずっと苦しそうだったが、着実に歩いてきた。

ちょっと進むと、すぐに前岳山頂が見えた。

下から見ていただけでは想像もつかない、なだらかな山頂だ。

その先の小ピーク。

こちらの方が高いのではないか。

振り返ると、中岳(3083m)頂上も姿を現した。

おお、北に塩見岳(3052m)。今朝よりぐんと近づいた。

北西方面に塩見岳へと続く縦走路。正面は小河内岳(2802m)。
あの稜線もいつか歩きたい。

分岐でたむろしていたおじさんグループが空身で後を追いかけてきた。

ちょうど5分で前岳に到着。

南にはガスが多いが、赤石岳(3120m)。


前岳南面の断崖。

下から雲が湧き上がってくる。

イワベンケイ1株。

こんな位置関係でした。

小赤石岳(3081m)山頂。

赤石岳の全容。

二つの斑点が特徴的なタカネシオガマ。

悪沢岳(3141m)は残念ながら、すっかり雲の中。

引き返して中岳に向かう。

中岳の左に塩見岳。

右に悪沢岳。

北の小河内岳は、右肩にある避難小屋が目印。

その右奥には前小河内岳(2784m)。

前岳の西に連なる名もなきピークたち。

さっきの分岐まで戻ってきた。

後続部隊も到着していた。

こちらは休まずに中岳に取り掛かる。

頂上付近は完全なゴーロだ。

振り返ると、前岳の全容が分かる。

あのピークこそ前岳にふさわしい気がするのだが。

O君を待たせているので、すこし速足で登る。

よく見ると、前岳にはかわいい巻き道があった。

赤石岳の北東尾根(手前)と東尾根(奥)。

左手前は板屋岳(2646m)。

赤石岳の西斜面はすでにガスの世界。

分岐から6分で、中岳に到着。

改めて前岳。


空身のおじさんたち。

みんな空身だ。

三角点は惜しくも三等。

中岳のピークを通過すると、すぐ先に中岳避難小屋が見えた。

奥にそびえているはずの悪沢岳は残念な状態。

すぐに中岳を振り返る。

この避難小屋は一応、営業小屋ということになっている。

小屋のおじさんがいたので、堂々と中を覗きこむことができなかった。

高山植物がネットで厳重に守っているように見えるが側面には何もない。何だろう。

小屋の真ん前のベンチでO君は休んでいた。

(この人ではない)
さて、どうするか。昨日は、荒川三山がガスで何も見えないようなら、中岳に泊まるという方針を決めた。
ただ、前岳、中岳は晴れていた。
残すは悪沢岳のみ。しかも、時間はまだ正午だ。

ここに泊まった場合の明日の行程を、声を出しながら計算していたら、O君が立ち上がって、「やっぱり行こう」と言い出した。
私はどちらでもよかったので、異存はない。
あとで「なして、いきなり決めたの?」と聞いたら、「ここは我々のいるべき場所じゃないと思ったから」と打ち明けてくれた。
なぜ、いるべき場所じゃないのか、までは聞かなかったが。
悪沢岳へは150m下った後、200m登る。

ここまですでに7時間以上歩いてきているだけに、かなりきついだろう。
それでも決めたからには出発。

前方から単独のおばさんが来る、と思ったら、おじさんだった。

中岳を振り返る。

ここの斜面も赤いチャートが目立つ。


その斜面越しの赤石岳。


悪沢岳の頂上にかかるガスは消えたり、かかったり。

タイミングが合えば、晴れるかもしれない。

左手に再び、塩見岳(右)と小河内岳(左)。

このこぶは巻く。

イワギキョウ。

お、小赤石岳の向こうに、やっと赤石岳が見えてきた。

振り返れば、中岳避難小屋も。


左手は魚無沢。これも大井川の源流の一つ。

塩見岳の稜線に、あんな崩落地があったとは。

びっくりぽんや(←古い)。

さすがに赤石山脈。岩が赤い。

中岳の全容。

鞍部まではもう少し下る。


悪沢岳の悪そうな岩壁が目の前に迫ってきた。

登り返しのルートが見える。

悪沢岳は南アルプス南部の最高峰だけに貫禄十分。

塩見岳の背後にも夏雲が押し寄せている。

振り返っても、もう中岳は見えない。


お~、雲が切れた!

しかし、かなりきつそうだ。

赤石岳はまた雲に隠れてしまい、小赤石のみ。

へばりつくハイマツ。

鞍部からの南斜面。


鞍部直前のこぶを通過する。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
荒川小屋を出発して、荒川前岳(3068m)を目指している。
標高差は小屋から稜線まで約400m。コースタイムは1時間半だ。

振り向くと、赤石岳(3120m)の絶景。

小屋からも随分登ってきた。

足元にはミネウスユキソウ。

そしてイワインチン。

前岳は完全な岩の山だ。

休み休み登り、来た道を振り返る。

赤石岳に見えているのは、実は小赤石岳(3081m)。

それでも大きいことに変わりはない。

左手は前岳の大岩壁。

それを横目にガレ場の急登を登っていく。

おお、中岳避難小屋まであと1時間。

少し元気が出た。

赤石岳の背後に大きな雲が迫ってきた。

前岳のこぶの向こうに大沢岳(2819m)や中盛丸山(2807m)が見えてきた。

きっと、この方々も今夜は千枚小屋に泊まるのだろう。

登る人と下る人。

右手は赤石岳の東尾根。

とうとう赤石岳に雲がからみ始めた。

時刻は11:20なので、昨日より3時間以上も遅い。いいことだ。

大沢岳方面にも雲が湧いてきた。

それにしても、前岳への登りは果てしないように見える。

今にも剥がれ落ちそうな岩。

再び、ザ・南アルプス。

お互い頑張りましょう。


少し先が見えてきたんだろうか。


前岳に限って言えば、終盤戦かな。

いや、せいぜい後半戦か。

タカネマツムシソウの大群落。

ハチが何匹も蜜を吸いに来ている。

なにやらネットが見えてきた。

前岳の2694mピーク(右)よりも随分高くまで上がってきた。

雲の背も随分高くなった。

後半戦のわずかなトラバース。

高山植物の保護柵の中に入る。

この斜面は広大なお花畑だ。

引いて見ると、ただの草っ原だが

緑の濃いのはバイケイソウ。笠のようなのはノラニンジン。

白と茶色はムカゴトラノオ。

後続の方々。

ミヤマコゴメグサ。

ハクサンフウロ。


お花畑越しの赤石岳。


黄色はキオンとミヤマコウゾリナ。

こちらはキオン。

これはミヤマコウゾリナ。

茶色くなったイワベンケイなんて初めて見た。

岩陰にひっそりと咲くイブキジャコウソウ。

お花畑の中の道はうねりながら登っている。


ミネウスユキソウ。


間もなく、お花畑通過。

お花の写真を撮っている間に、どんどんO君は行ってしまった。

ミヤマコウゾリナはタンポポみたいだ。

当方は柵から出た。

まだ、柵内にはたくさんの方々がいる。

オンタデ。


ヤマハハコ。

これはやけに葉っぱが主張しているヤマハハコだ。

これまた絵になる風景。

さあ、今度こそ先が見えてきたかな。

この先を曲がると

ありゃりゃ、まだまだじゃんか。

う、悪沢岳(3141m)が見えたと思ったら、すでにすっぽりガスの中。

この稜線は中岳(3083m)からの下りだ。

この先はトラバース気味に登る。

団体さんが向かってくるようだ。

お花畑越しの荒川小屋。

とうとう空は雨の準備をし始めたようだ。

眼下にカールもどき?

ここを行き交う人がこんなに多いのはなぜ? 偶然?

すれ違うのも大変だ。

このあたりのヤマハハコは葉っぱが美しい。

さあ、もうひと踏ん張り。

このトラバースはそんなに傾斜がきつくないので、ありがたい。

ちょっと富士山っぽい植生。

これはあまり富士山とは似ていない。


後続隊はあそこでひと息入れたか。

彼らは、今日は赤石岳山頂まで頑張るのだろうか。軽く3時は過ぎてしまうが。

やはり小さなカールのようだ。

あれ、トラバースの先に、もう高いところはほとんどないぞ。ということはもうすぐだ。

右も左も鋭い岩壁。

だから、岩壁直登はいけません。

このトラバースもいい道だった。

斜面はオンタデの群落。

イワギキョウも正面を向いて元気に咲いていた。


ラッパを吹いているようにも見える。

午後零時ちょうど、ほぼコースタイム通りに稜線の分岐に到着した。

ここからは私のみ左折して、前岳に向かう。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
赤石岳(3120m)から大聖寺平を経て、荒川小屋に向かっている。

正面に荒川前岳(3068m)。陽希さんが登った稜線だ。

トラバースしている斜面もダイナミック。

草原のように見えるのは、みなハイマツ。

標高2650mあたりまで下ってくると、低木が目立ってきた。

それとともに高山植物も。これはウサギギク。

ハクサンフウロ。

う~ん、言葉が出ない。

赤石岳の尽きるところ。

赤石岳と荒川岳の接点だ。

とうとう樹林帯の中に入った。


お、また富士山が見えた。

あちらには雲の津波が押し寄せている。

こちらにも雲の影が発生。

と思ったら、荒川小屋発見。

随分きれいで新しい。

あそこまで行く前に、ひと休みだ。

小屋の向こうのトラバース道もはっきりと見えている。

小屋まではもう少し下らなくてはならない。

なんかもったいない。

これは荒川前岳の隣のピーク。こんなに目立つのに名前がない。

さあ、もうすぐで飯にありつける。

その前に林を抜けなくては。

なんと道はいったん小屋より低いところまで下ってしまう。登山道から数十㍍も下らされた。

小屋直上の小ピーク。

小屋へはちょっと登り返し。

10時すぎに到着。小屋周辺は人口が多く、かなりの登山者とすれ違った。

まだお昼には早いが、なんせ朝食を食べたのが朝4時すぎだから、もう6時間も経っている。

とにかく暑いので、靴を脱がないといけないが、中の食堂に入る。

名物、荒川カレー(1000円)。O君は400円の缶コーラも頼んだが、私は水で我慢。

カレーはやや量が少なめだったが、ニンニクスライスを揚げたのが入っていておいしかった。
バッジも「荒川三山」と「悪沢岳」の2つを購入。計2000円の出費となった。
食べ終わったところで、トイレに寄りがてら、あたりを探検。

赤石岳山頂小屋のコマーシャルまであった。

緑がまぶしい。

赤石岳が巨大なイモムシのよう。


これはテン場。さすがにこの時間はまだ1張もない。

部屋までは見ていないが、泊まってみたい気もする。

トイレに寄って、水場へ。

補給はしなかったが、一口いただく。さすがに冷たかった。

あたりは、タカネマツムシソウのお花畑。


とうとう富士山は隠れてしまった。

さて、本日第2ラウンド。荒川三山への登りだ。

もちろん、この斜面を登るわけではない。

雲が湧いてきたのが、若干気になる。

水場までかなり下ったので、戻るのが大変だった。

ミヤマコゴメグサ。

小屋の後ろを回り込んで、さあ出発。

樹林帯ともおさらば。


すぐにガレ場となる。

まさに落石危険地帯。

ミヤママツムシソウに見送られる。

赤石岳の長大な稜線に感服。

あちらにも雲が発生してきた。

雪の重みで木はまっすぐに生えない。

まだ、ちょっと樹林あったね。

でも、この先はほとんどハイマツ。

ノラニンジン。

トラバースを終え、いよいよ直登へ。

ここも落石注意。

早めに通過する。

この先は高山植物が増えていく。

これまた絵になる風景。

岩を踏みしめて、一歩一歩。

皆さんも気をつけて通過して下さい。

何か落ちてきたら一巻の終わりです。

小屋はこんなに広大な緑の中にあったんだ。

赤石岳も交えて。

さあ、後ろばかり見ずに進むぞ。

シャクナゲ。

見事である。

こちらはもうずっと急登。

シナノオトギリ。

わ~もう南の空は雲に占領された(ように見える)。

すでに懐かしきトラバース道。

もう雪解け水ではないはず。

アルペンムードたっぷりだ。

南アルプスは崩れつつ成長していることがよく分かる。

ちょっと、ひと息。

白いのはミネウスユキソウ。

右の二つのコブに名前はない。

名前付けたいねえ。

この先はもう岩だらけを覚悟。


皆さんも、間もなくそうなります。


そして赤石岳に見取れています。

O君はひたすら前向き。

私は脇見ばかり。


雄大!という言葉しか浮かばない。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
赤石岳(3120m)から北へダマシ平まで下ってきた。

ここは標高およそ2850m。大きなケルンがあった。

そのてっぺんに、意味は分からないが、位久光霊神の碑が置かれていた。

振り返ると、赤石岳の山塊。


ダマシ平から見る荒川三山。

小赤石岳の肩(3030m)を振り返る。

その奥に小赤石岳(3081m)。

そして赤石岳。

ケルンを通過する。

しばらくは登山道を外れたまま。

ただ、踏み跡らしきものはある。

登山道に戻るルートを探しながら歩く。

ここで合流できそうだ。

若干、ハイマツを横断しないといけなかったが、わりと楽に登山道に戻れた。

再び、O君の後を行く。

あの稜線を登ってみたい気もするが、やはり岩が崩れやすいらしい。

赤石岳という山は実に大きい。

右手は大井川の源流のひとつ、奥西河内の本谷。

その真正面に悪沢岳(3141m)。

すぐ先に今度は大聖寺平が展開する。

その奥には派手な大崩壊。

荒川前岳(3068m)南面の崩落もかなり激しい。

ここをクライミングする人はいるのだろうか。

悪沢岳(荒川東岳)は日本百名山。

巻き道の軌跡がよく見える。

あそこを歩くのも楽しみだ。

唐突に、前茶臼山(2331m)。

赤石岳の北斜面。

やっと大聖寺平まで下ってきた。

小赤石岳の肩からの下り。

荒川小屋へのトラバース。

やや、いよいよ雲が発生してきた。

ここは赤石と荒川、南アルプス両巨頭の鞍部である。

それだけに大きなケルンが鎮座している。

それはまさに荒川前岳の尾根へとつながっている。

この角度から見るのが、一番美しいかな。

ちょうど9時半に大聖寺平の道標に到着。

ここは信州側の小渋に下りていく道との分岐でもある。

ケルンと小赤石を振り返る。

これは小ケルン。

目の前には壮大な眺めが展開している。

O君が実物以上に格好よく見える(笑)

ケルンとダマシ平。

あの田中陽希さんはトラバースの雪渓を避けて、この稜線を登ったのだった。

しばらくは楽に行けそうな気がする。

間もなく、トラバースの入口に到着。ここにも道標があった。

険しいアルプスにも、ホッと一息つけるこういう場所もあるのだ。

小赤石岳。

さて、上を仰ぎ見ながら、トラバースに突入。

あ~っ、悪沢岳に悪い雲が~~~

大きく発達しないことを祈る。

さらば、大聖寺平。

巻き道は心持ち下っている。

こうして見ると、赤石岳の北斜面は地肌が露出しているところの方が多い。

少し歩いて、また名残を惜しむ。

右手は本谷の源頭。

実にダイナミックである。

前方には深い谷が刻まれている。

荒川前岳が迫る。

小赤石岳の肩に、この瞬間は人影がない。

この道も思った通り、やはり楽しい。

青い空と白い雲。

悪沢岳を目指すような感じで歩く。

大聖寺平の鞍部にほれぼれ。

とにかく広い。

霜降肉状態のところも。

本谷は面白い谷だ。

前岳下部の斜面。

頂上は見えないが、巨大な赤石岳の山体。

これは理想的な角度ですなあ。

それにしても歩きやすい道だ。

赤石岳の尽きるところ。

今はちょうど荒川岳と赤石岳にはさまれて歩いていることになる。

ハイマツの中からキオンが顔を出していた。


この縞模様がすごい。

少しずつ道は左へカーブしていく。

それにつれて荒川前岳が全容を現してきた。

本谷の谷底。

はるかな旅を続けて、太平洋に注ぐ。

道はさらに下る。

なんだか、もったいない。

ちょうどカーブを曲がったところ。

赤石岳北東の稜線。

しかし、またあんな高さまで登らないといけないとは。

人間って、なんてちっぽけなんだ。

でも、今日中にあの山を越えていけるなんて、偉大だ。

5時間でこの山を越えてきたんだからなあ。

それはともかくお腹が空いてきた。

早く小屋に着いてカレーが食べたい!

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
8時半すぎ、小赤石岳(3081m)に到着。じっくり眺望を楽しむ。
まずは百間平。

その左に兎岳(2818m)。

大沢岳(2819m)北の稜線。

しらびそ峠から奥茶臼山(2474m)に至る稜線。

中央アルプス。

すぐ北に続く登山道。

荒川前岳(3068m)と、その奥に仙丈ヶ岳(3033m)。

大聖寺平。

農鳥岳(左、3026m)と広河内岳(右、2895m)。

荒川中岳(3083m)。

悪沢岳(3141m)。今回の山行の最高地点となる。

言わずと知れた富士山。

裾野の手前には毛無山(1964m)。

左のなだらかな稜線はおそらく櫛形山(2052m)。

アップにしてみた。

はるかに奥秩父の主稜線。

赤石岳(3120m)の東尾根。

稲又山(左、2405m)と青薙山(右、2406m)。

中列は上千枚山(2359m)。

360度の大パノラマを撮影しているうちに、O君は行ってしまった。

あわてて追いかける。

東尾根はいつか歩くことがあるだろうか。

ありゃ、もうO君の姿が見えなくなった。

荒川前岳と中岳。これから参ります。

しばらく見えないかもしれないので、赤石岳を振り返っておく。

北西の斜面は刃物で切ったかのように直線的だ。

百間平も随分遠くなった。

さあ、ここからは長い下り。

中岳と悪沢岳の間は大キレットと呼んでもいいほど凹んでいる。

中央にダマシ平。

まずは小赤石岳の肩(3030m)まで下る。

肩というくらいだから、ほぼ平坦。

多少のアップダウンはある。

ゴリラ岩(仮名)。

北から見た小赤石岳。

とうとう雲が湧いてきた。もうしばらく持ちこたえてほしい。

イワギキョウ。

こんにちは~

ダマシ平がよく見える。なぜ「ダマシ」なのか。

小赤石と赤石が並ぶ。

まさに空中漫歩。幸せだ。

こういう稜線の道はたまりません。

3000m級ならではだ。

ちょっとだけ登り返し。

小型の二重山稜。

その谷間は御花畑。

振り返っても、よし。

赤い花はオンタデか。

あのあたりが小赤石岳の肩だろうか。

ハイマツの割れ目を登る。

どうやら肩に着いたようだ。

ここから見た荒川前岳の稜線が圧巻だった。

登山道は稜線を行かず、巻き道が荒川小屋に通じている。

小屋は登山道よりかなり低い位置にある。

荒川三山のうち、前中の2峰が眼前に迫る。

小赤石岳。

左から兎岳、中盛丸山(2807m)、大沢岳。

前岳から板屋岳(2646m)に至る稜線の南斜面は完全な崩落地形。

さあ、ここは早めに出発。

ここから大聖寺平まで300m一気に下る。

でも、真正面に荒川三山を見ながらなので、楽しくて仕方がない。

ここからの眺めは今回の旅のハイライトと言っていい。


岩がすごい。


ガスが出なければ、今日は悪沢まで行きたい。

大崩壊。

広大なダマシ平。

そこに人影あり。

奥茶臼山。

崩落の激しい西斜面。

全く気持ちのいい下りだ。

長い下りだとO君の膝が心配だが、膝ではなく足先が痛くなってきたらしい。
靴のサイズが合わないようだ。
大沢岳北の鋸形の稜線。

前茶臼山(2331m)の崩落も激しい。

大沢岳。


右端のギザギザは千枚岳(2880m)。

荒川岳の巻き道の起点がある大聖寺平。

奥西河内の本谷。

ダマシ平が目前に迫ってきた。

南アルプスは今なお活発な造山活動を続けている。

荒川岳の山腹を横切る巻き道。

その難所。

赤石岳の馬の背。


その左の斜面。

赤石岳。


今下っている斜面を振り返る。

荒川前岳の大崩壊地。

ダマシ平を一人登ってくる。

私も途中、登山道から離れてダマシ平に立ち寄ることにした。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
赤石岳(3120m)山頂の避難小屋付近を探索中。

いつのまにか山頂にいる登山者は随分減ってしまった。

さて、O君の待つ山頂に戻りましょうか。

小赤石岳(3081m)くん、後で行きますからね。

赤石岳山頂部の二重山稜。

左に聖岳(3013m)。

そのアップ。

東聖岳(手前、2800m)とその左奥に上河内岳(2803m)。

今度は引いてみます。

そうだ、小屋でバッジを買わなくては。

猫みたいなデザインのバッジがあったので、「これは何ですか」と聞いたら、小屋の名物おじさん(酒好きで有名らしい)が「タマだよ」と言う。
「え?ここで飼っているんですか」と驚いたら、「いやいや、オコジョだよ」。
かつがれてしまった。
全然渋くないバッジだが、タマにはこういうのもいいだろうということで、オコジョを購入。
ついでに、周りに林立している板石のことを聞いてみたら、「ここは信仰の山だから、昔からあったみたいだよ。以前はもっと多かったけどね」とのこと。

そうか、これは信仰遺跡なのか。


よく見ると、確かに「赤石岳天神地祇大神」と刻まれている。

てっきり、この名物おじさんが変わったことをしようと思って、勝手に作ってしまったものかと思った。

こちらの石碑の奉納は大正6年。

というわけで、やっと小屋を辞す。

左前方に岩峰を見ながら引き返す。

知らぬ間にまた人口が増えている。

急ぎましょう。


駆け登ったら、わずかな距離なのに息が切れた。さすが3000mの高山だ。

いや~O君を随分待たせてしまった。ごめんごめん。

この間に静高山岳部の面々が到着していたので、そのうちの一人に記念写真を撮ってもらったが、逆光で全然だめだった。
もう一度、周囲を見渡す。奥茶臼山(2474m)。

おそらく笊ヶ岳(2629m)。

小屋にいた方々が百間平方面に下っていく。

百間平方面を一望。見事な景観だ。

南西方向、遠くに浮かんでいるのは、おそらく恵那山(2191m)。

どれ、人口も多いので、そろそろ出発することにするか。

小赤石岳から眺める赤石岳に憧れているので、雲が湧く前に着きたい。

周辺でちょっと雲が湧いているが、今日はたぶん大丈夫だろう。

前方は荒川前岳(3068m)の向こうに塩見岳(3052m)。

眼下にはダマシ平。

右手、東尾根(大倉尾根)に赤石小屋が見えた。

前方から登って来るのは、荒川小屋から来た方々だろうか。

こちらはまず100mほど下る。

早めに一度山頂を振り返っておく。もう標柱は見えない。

信州側、小渋川の広河原。

望遠で見ると、小赤石岳の山頂にも人がいっぱい。

そこへと、ほぼ一直線に続く稜線の登山道。

その左奥には荒々しい大崩落地形が望める。

再び振り返ると赤石岳は三角錐。

最高の空中散歩である。

右にギザギザと傾いている稜線はラクダノ背。

左の全景。

手前から東尾根、笊ヶ岳、そして富士山。

かなり下ってきた。

通り過ぎたばかりの小ピーク。

そして、わりとすぐにコルに達した。

赤石岳もちょっと離れると、その大きさが分かってくる。

北東斜面も男性的な景観だ。


その左(東)は笊ヶ岳を主峰とするアルプス前衛の山脈。

順光で見る赤石岳に大満足。

おお、高校生たちも下りてきた。

行く手は小刻みなアップダウン。

小赤石もそれなりに立派な山だ。

東尾根を下る椹島への道との分岐に到着。

ここで下ってしまう人も結構いるようだ。

振り返ると、再び頂上の標柱が姿を現した。

小ピークも含めて振り返る。

小赤石を右側面から。

分岐は当然通過。

ここからは登り返し。

ハイマツの怪獣の横を通過。

お~かっこいい~

やっぱり森林限界より上はいいなあ。

大沢岳(中央、2819m)の方が高いのに中盛丸山(左、2807m)の方が高く見える。

おじさんのグループとすれ違う。

いやあ何度も振り返ってしまう。

ここはさしずめ南アルプスの表銀座といったところか。

絶景の稜線歩き。やはりアルプスはこうでなくては。

沢も嫌いではないが、やはり私は尾根派だ。


稜線の道を愛す。

再び、山頂部。

ほとんど、どっちを向いて歩いているのか分からない。

前方も撮らなくては。

背後では、高校生とおじさん集団との遭遇。

小渋川の深い谷。

間もなく小赤石岳だ。

鞍部を見下ろす。

百間平方面もだいぶ角度が変わってきた。

いい斜面だ。中央の突起は兎岳(2818m)。

8:35、赤石岳から30分かからずに小赤石岳に到着。

早速、振り返って赤石岳を望む。これが見たかったのだ。

赤石岳も聖岳同様、台形の山だった。

ガスが出なくて、ほんとによかった。
(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
百間洞山の家を出発して2時間半ちょっとで赤石岳(3120m)の頂上台地に乗った。

正面に避難小屋を見ながら、左の稜線に乗る。


頂上部は二重稜線のような地形になっている。

これはもう一つの稜線。

その間の窪み。

右手には富士山が浮かんでいる。

ただ手前の稜線に小さな雲がいくつも発生しているのが気になる。

稜線西側のピーク。

その背後に兎岳(2818m)が見える。

赤石岳というだけあって、やはり岩が赤っぽい。


岩稜の向こうに中央アルプス。

写真を何枚も撮っている間に、O君とすっかり離れてしまった。

でも彼はトイレに行きたいと言っていたから、たぶん避難小屋に寄るだろう。

う~ん微妙なバランス。

富士山の上層は薄く霞んでいる。

右側の稜線を振り返る。

これは今歩いている稜線。

その向こうに聖岳(3013m)

富士山の右下は笊ヶ岳(2629m)。その右のなだらかなピークは布引山(2584m)。

左手には荒川前岳(3068m)と中岳(3083m)。

その左奥に仙丈ヶ岳(3033m)。

さらに左は南アルプスの西面。奥の双耳峰は入山(2186m)か。

前岳の真後ろに塩見岳(3052m)が覗く。

一番高いのが中岳。

その右奥には農鳥岳(3026m)と広河内岳(2895m)。

そして赤石岳の頂上がようやく見えた。

避難小屋との位置関係はこうなっている。

もう一度、二重山稜を振り返る。

聖岳を背景に、高校生たちが上がってきた。

この岩稜はトラバースする。

今にも崩れそうだ。

そんなところにオンタデ。

そしてイワギキョウ。

今日は何とかガスが湧かないうちに着けそうだ。

赤石岳山頂部のいくつかの小ピーク。

高校生たちの背後は光岳(2591m)に変わった。

どんどん登ってくる。

左側の山稜を歩いていると思っていたら、もう1本左側に稜線があった。


いったん稜線から下る。

谷まで下りてきた。

この谷を進んでいく。

山頂へ直接つながる道は通行止め。

O君ははるか先だ。

イワギキョウが目に鮮やか。

山頂付近のゴーロ。

迫力満点だ。

ちょっとモンゴルの高原に似た感じ。

古びた道標の横を通過。

赤石岳山頂部の西半分の景観。

聖岳(右)とその左奥に上河内岳(2803m)。

これが有人の避難小屋。

O君はおそらく小屋のトイレに寄るだろうと思っていたのに、まっすぐ山頂に行ってしまった。
私は小屋にバッジを買いに寄りたかったのだが、あまり待たせるのも申し訳ないので、とりあえず山頂に向かうことにした。

大沢岳(2819m)と、その背後にしらびそ峠のある山稜。

さっきのゴーロを見下ろす位置まで登ってきた。

小屋も見下ろす。

頂上直前の標識。

そして3時間弱で赤石岳に登頂。頂上には早朝から10人くらいの人がいた。

コースタイムは3時間10分なので、ほぼ変わらず。

初めて見えた小赤石岳(3081m)。右奥は悪沢岳(3141m)。

小赤石にはもう人が到着している。

小赤石から東南に延びる、いわゆるラクダノ背。

悪沢岳の雄姿。

中岳と悪沢岳のコルの向こうに見えるのは農鳥岳と広河内岳。

前岳の真上に塩見岳。その右に覗くのは甲斐駒(2967m)。

ちょっと望遠にしてみよう。

仙丈も恰好いい。さすが南アルプスの女王。

あの稜線歩きはめちゃめちゃ楽しそうだ。

タカネヒゴタイ。

上空の空気が2層になっている。

どうも奇妙な感じだ。

中央アルプス。

中央アルプス北部の手前に横たわるは陣馬形山(1445m)かしら。

これはもうどこの山だか分からない。

でも360度の大パノラマ。素晴らしい。
ひと通り撮影したところで、小屋の見学に出かけることにした。
O君に「ちょっと小屋に行ってくる」と言い残して、坂を駆け降りる。

ちょっと戻ることになる。

高校生たちもいよいよ近づいてきた。

再び、赤石岳山頂部の西半分。

ラクダノ背と悪沢岳。

小屋の前にはなぜか平石がいくつも立てられている。


何だろうと思いつつ、小屋を通過して、まずは南東方向の踏み跡をたどって行ってみる。

行き止まりまで行ってみたら、山梨県に多い丸太を輪切りにした山名板が立っていた。

棒が1本立っているように見えたのはこれのことだったのだ。

でも、なぜ頂上でもないところにこれが立っているのだろう。
それはともかく、ここからの眺めがまた素晴らしい。

小赤石への稜線。

悪沢岳もよく目立つ。

そして、改めて赤石岳頂上を望む。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
赤石岳(3120m)の馬の背を過ぎ、大斜面トラバースに臨むところまで来た。

あれが、その大トラバース。

静高山岳部の行列がキャラバンのようだ。


左端がその起点。

巨大な赤石岳の陰に入る前に、荒川前岳(中央、3068m)と中岳(右、3083m)を目に焼き付けておく。

馬の背の小ピーク(2827m)を振り返る。

荒々しい赤石岳の崩落地形。


あそこは頂上ではないが、登山者の姿が見える。

いよいよO君がトラバース開始。

高校生たちの後を追う。

聖岳(3013m)も奥聖の方が目立ってきた。


私もトラバースに突入。標高差は80mほどだ。

見たこともないような果てしもないガレ場だ。

まるでインカ道。

いったい何億個の岩があるのだろう。

兎岳(左、2818m)と中盛丸山(左、2807m)を復習。

大沢岳(左、2819m)と馬の背の小ピーク(右)。

こうして見ると、小ピークとは言え、そこそこ立派だ。

大斜面下のコルを振り返る。

この紅白は一応、登山道の印なのだろう。

全く、岩だらけの道である。迫力満点だ。

見上げても岩しか見えない。大きな山を登っているという実感が湧いてくる。

ハイマツの生える土などあるのだろうか。

よくぞ、こんな道を作ったものだと思う。

あの岩峰が頂上というわけではない。赤石岳のわりに赤い石ではない。


右手には百間平。百間とは180mのことだが、全然それ以上ある。

こちらは馬の背。

お馴染みの兎岳、中盛丸山だが、いずれも結構いい形をしている。

その左に聖兎のコル。

奥聖岳(右、2978m)と東聖岳(左、2800m)。

影赤石はびっくりするほど真っ黒。

少し望遠で。

馬の背のこぶたち。

聖岳の北面は赤石沢の深い谷。

なおもトラバースは続く。

いきなりガレ場が途切れた。

広大な百間平。

まさに馬の背。

先ほどの岩峰の高さまで登ってきた。溶岩ドームのようだ。

20分ほどでトラバースは終了。

ちょうど岩峰にも日が差した。

聖岳の台形がやや崩れてきた。

ここで高校生が休んでいたので、再び先に行く。

ここからは標高差200m近い急登だ。

日が当たると岩が少し赤っぽいことが分かる。


あたりは相変わらずのゴーロ。


スケール感が全く違う。

あのあたりがやっと山頂部。

この斜面を登る。

何だか岩雪崩の様相を呈している。


よく見ると、確かに赤っぽい。


我々も早く日向に出たいなあ。

かなりの急勾配だ。頑張らねば。

O君は調子がいいようで、休まずぐんぐん登って行くので、姿が見えない。

こちらも、景色がいいので何度も立ち止まるが、気力が充実しているので力強く登れる。

高校生たちも行動再開。

あんなところに咲いているなんて、イワツメクサとはよく名付けたものだ。

あそこまで登れば、頂上台地に出るのだろう。

標高は2950mを超えてきたので、やつらを見下ろす位置に来た。

馬の背に岩峰、そして奥茶臼山(2474m)。

聖岳と兎岳のコンビ。

イワギキョウ。

もうひと踏ん張り。

いやあ、赤石岳がこんなに巨大な岩山だとは思わなかった。


稜線に沿って日が差し込む。時刻は7時を回った。

岩しかないので、このあたりの高山植物はさすがに限られている。

2800m級の兎岳も完全に眼下になった。

赤石の稜線越しに見る中央アルプス。

南アルプスは毎年4ミリも隆起しているという。

南西の空に浮かんでいるのは恵那山(2191m)か。やけに高く見える。

昨日ガスの中歩いた稜線とさっき歩いた百間平&馬の背。

奥茶臼山と中央アルプス。

馬の背は屋根状になっているので、やはり百間平とは違う。

こう見ると、その差が分かりにくいが。

さあ、もうそろそろかな。

ほとんどあたりは日向になってきた。

あと一息だ。

ミヤマダイコンソウも応援してくれる。

最後の日蔭道。

最後の百間平振り返り。

さあ、出ますよ。

頂上台地に乗りました~


まずは改めて聖岳の雄姿。

その左肩から上河内岳(2803m)が覗く。

O君はもうあんなところに。

お~赤石岳避難小屋が見えた~

景観ががらりと変わった。

うわ~富士山だ~!

引くと、こんな感じ。赤石岳の頂上部の地形はかなり複雑だ。

(つづく)
【2016年8月5日(土)】南アルプス南部
百間洞山の家から1時間弱で、百間平の肩に到達した。

一応標柱が立っていた。

百間平は一面のハイマツ畑である。

正面には赤石岳(3120m)。完全逆光であまりいい写真が撮れない。

百間平越しに見る南アルプス北部。

同じく、奥茶臼山(2474m)と中央アルプス。

百間平の真ん中あたりまで来た。

ここでしばらく立ち休み。

小屋から1.5km歩いてきたことになる。

左前方に荒川前岳(3068m)。

百間平の2782mピークに朝日が当たった。

聖岳(3013m)の雄姿。

この辺りはまだ、赤石岳の陰になっており、日が差していない。

ちょっと露出を変えてみました。

塩見岳(3052m)のアップ。

その右に、ちょうど1000m低い櫛形山(2052m)が見えた。

赤石岳の西斜面。

O君がfacebookに投稿している間に、ゆっくり出発。

この辺りはハイマツではなくコケ畑。

地面は構造土になっている。

ハイマツの新芽。

朝露の中に早くもアキノキリンソウ。

馬の背へと登っていく。

今日も雲ひとつない青空だ。

振り返ると、静高山岳部が追いかけて来る。

ふと、聖岳に小さな雪渓を発見。

百間平を振り返る。もう半分くらい日向になっている。

大沢岳(2819m)もすっかり全体が鮮やかな緑になった。

聖兎のコル越しに見えるのは易老岳(2354m)。

ちょっと引いてみよう。

こちらは百間平越しの中盛丸山(2807m)。

いやあ、いい眺めだ。実に美しい。

左は兎岳(2818m)。

崩落が進む赤石岳の斜面。

左側は絶壁。

右手に奥聖岳(2978m)。

そして聖岳。

緑に輝く百間平と、左から兎岳、中盛丸山、大沢岳。

奥茶臼山(左)と前茶臼山(右、2331m)。

大沢岳の北陵。

奥茶臼山と大沢岳は稜線でつながっている。手前は丸山(2374m)。

何度見ても聖岳は堂々としている。

O君に続いて馬の背を行く。こちらにもやっと日が差してきた。

その前方を行く登山者のシルエット。なかなか絵になる。

高校生たちもきっと気持ちよく歩いていることだろう。

山岳部に入ってよかったと思えている瞬間じゃないかな。

逆光写真に挑戦。

右前方は、稲又山(左、2405m)と青薙山(右、2406m)だろうか。

左前方は、荒川三山に塩見岳。

影赤石もだいぶ後退した。

大沢岳を背に。

あの大きなザックでストックがないと、あんなふうに手はだらんとなるんだろうなあ。

影でエールを送りました。

再び聖岳。

兎岳と右手前に小兎岳(2738m)。まさに親子だ。

奥茶臼山と中央アルプス。

奥の双耳峰はたぶん除山(2041m)。その手前は高山(2293m)かなあ。

その左、最奥に仙丈ヶ岳(3033m)。手前はおそらく小河内岳(2802m)。

すべて日の下にさらけ出した百間平。

どんどん緑が鮮やかになっていく。

中盛丸山は富士山のようだ。

大沢岳。

大沢岳北峰。

馬の背が尽きる手前で、あちこち撮影している間に、高校生たちに抜かれてしまった。

中央アルプス。左が南駒ヶ岳(2841m)、右が空木岳(2864m)。

右の突起は宝剣岳(2931m)。

再び、仙丈ヶ岳。

塩見岳。

聖岳。百名山そろい踏みである。

ダイヤモンド赤石。

馬の背の小ピーク。

馬の背と百間平。

よく歩いてきたものだ。

馬の背の南斜面。

影赤石と影私。

兎の親子。

これから歩く赤石岳の大トラバース。

ここを下れば、大斜面下のコル。

昨日歩いた稜線。かなりアップダウンが激しい。

馬の背2つ目の小ピークを振り返る。


百間平と大沢岳。

同じく、中盛丸山。

まさに大迫力。緑一色の夏山も本当に美しい。

赤石岳頂上の小屋から下ってきたと思しき方とすれ違う。

ちょっと下るのがもったいない。

見ているうちにだんだん奥茶臼にも登りたくなってきた。300名山らしい。

光の輪。

高校生たちは大斜面のトラバースに取り掛かった。

後ろからは誰も来ない。

(つづく)
【2016年8月6日(土)】南アルプス南部
まわりがごそごそし始めたので、3時半に起床。
パッキングを済ませて、4時前に食堂前に並ぶ。
朝食は4時半から早い者順ということになっている。
30分も並ぶのはばかばかしいのだが、他にもうすることがないので別に構わない。
1番手に並んでいた人とぽつりぽつり雑談。
同じスペースに寝ていた男性で、ほかに女性2人のグループの人だが、「並ぶくらいしか役に立たないので」と自虐的なことを言っていた。
幸い、予定より早く4時10分すぎに食堂が開いて、すぐに食べ始めることができた。

おかげ様で、トイレでじっくり取り組むこともできた。
トイレに入る前に金子貴俊さんとバッタリ会ったので、声をかけてみた。
「おはようございます。金子さんでらっしゃいますか」
「ええ」
「いつも山の番組見ています。頑張って下さい」
「ありがとうございます」
と、それだけだったけど。
出発は4:45。まだ、薄暗いうちのスタートとなった。

静高山岳部より先に出たかったが、タッチの差で後陣を拝してしまった。

では出発。

静高山岳部の後を付いていく。

その前に聖岳(3013m)にご挨拶。

すぐに沢を渡る。


左手を見上げると大沢岳(中央、2819m)。

振り返ると、中盛丸山(2807m)の尖塔も見えた。

大沢山の東斜面。こんなふうにガスのない中で歩きたかった。

百間洞山の家よ、さようなら。

7分ほどで分岐に到着。ここは右折する。

右手にテン場。キャンパーも出発の準備かな。

双耳峰、大沢岳の左耳。

右耳の方はゴーロがはっきりと見えてきた。

テン場を見下ろす。

大沢岳は、きれいな双耳峰だ。

中盛も含めて。

大沢岳山頂部。

ガレ場をゆっくりと登っていく。

すぐに森林限界を越えた。
左手はるかに見えるシルエットは中央アルプスだろうか。

大沢岳の北壁。

中盛丸山もほぼその全容を現した。

百間平まで、小屋から標高差約300m。

高校生たちがちょうどいいペースなので、無理に抜かそうとしなくて済む。
ハイマツの中にゴゼンタチバナ。

大沢岳北壁と中央アルプス。

再び、大沢岳のゴーロ。

左手の展望。山座同定はできなかった。

そのさらに右に目を転じると、奥に仙丈ヶ岳(3033m)が確認できた。

まさにうっすらと槍穂高。

そして、塩見岳(3052m)の鉄兜。めちゃめちゃ恰好いい。これには感激した。

仙丈の右手前の高いのは、小河内岳(2802m)だろうか。

あのあたりもいずれ縦走したいものだ。
右手には兎岳(2818m)と、その手前に小兎岳(2738m)が見えてきた。

大沢岳に負けず、こちらもハイマツとゴーロ。


大沢岳の頂上は左のピーク。

お、中盛丸山の頂上に朝日が当たった。

再び、左手。仙丈(左)と塩見(右)のコラボレーション。

塩見岳の独演。

ほう、悪沢岳(31418m)も見える。

その左は荒川前岳(3068m)。

中央アルプス。真ん中あたりが多分、空木岳(2864m)。

高校生も3日目となると、慣れてスピードが上がってきたのか、O君がゆっくりなのか、高校生になかなか追いつかない。でも、抜くのもエネルギーがいるので構わない。


怪獣系の奇岩。

伊那谷に下る小渋川の深い谷。

ここはまだ日蔭だが、もうだいぶ日は昇ったようだ。

大沢岳の北壁。

何度目かの、大沢岳ゴーロ。

兎岳はもうすっかり日が当たっている。

大沢岳はまだ赤石岳の陰だ。

日の当たる人々。

中列は奥茶臼山(左、2474m)と前茶臼山(2331m)だろう。

前茶臼の奥に浮かぶのは乗鞍岳(3026m)だろうか。

むむ、遅れ出した部員がいたのかな。

こちらも岩の露出が激しい。

大沢岳山頂。

ひし形にかたどられた兎岳。

おお、やっと大沢岳にも光が!

どんどん明るくなる。

右手には聖岳(3013m)出現。

聖兎のコルの向こうに信濃俣(2332m)。

何度振り返っても実に美しい。


奥聖岳(左肩、2978m)も姿を現した。この台形が聖岳の一つの姿だ。

ずっと高校生の後をぴったりと着いていく。

塩見の右奥に見えるのは間ノ岳(3190m)だろうか。

足元には依然として日が差し込まない。

やっと傾斜が緩んできた。

聖岳の稜線の左端に東聖岳(2800m)。

大沢岳の左、百間洞下降点に何人か登山者の姿が見える。

中盛丸山の頂上にも2人ほど。

大沢岳の右のピークは登山道がないので誰もいないようだが、ケルンの存在が確認できる。

おお~っ、やっと赤石岳が見えてきた。

もろ逆光だけど、デカい!

百間平の肩で休んでいた高校生たちを抜かす。

我々はもう少し前進。

百間平はその名の通り高原だ。

左手に荒川三山。

改めて、南アルプス北部の全景を。

塩見の左奥で雲をまとっているのは甲斐駒(2967m)かしら。

(つづく)
【2016年8月5日(金)】南アルプス南部
大沢岳(2819m)から一気に下り、百間洞の沢に出た。

沢を渡ると、そこはテン場だ。

ヨツバシオガマとトリカブトのお出迎え。


沢には十分な水量があった。

テン場に出てからの道がちょっと分かりにくかったが、沢沿いに下ればいいだろうと判断。

やはり、それでよかったようだ。

テン場の人はトイレがかなり遠い。これでは大変だ。

再び、沢を渡る。

当たり前だがすばらしい清流だ。


沢は眺めているだけで気持ちがすがすがしくなる。

でも、雨も降っているし、急ごう。

ふ~、やっと着いた~。

頂上からコースタイム1時間のところ45分で下ってきた。
雨なので、急いで中に入り、先に受付を済ませてくれていたO君に合流。
ここは1泊2食9000円。寝具は持っていても、関係なし。
でも、でも畑薙からのバスで払った3000円が有効なので、差し引き6000円で済む。
バスに乗るには、東海フォレスト運営の山小屋に泊まることが条件となっている。
支払った3000円は、バス代ではなく山小屋に泊まらない人への罰金のようなもの。
つまりは山小屋への無料送迎バスという位置づけで、泊まれば返金される(宿泊費から差し引かれる)システムだ。
明日のお昼は荒川小屋で名物のカレーを食べる予定なので、弁当は頼まなかった。
指示された場所は8人くらいが眠れるスペースだったが、到着しているのはまだ我々2人のみ。
でも、ザックを置く場所やものを干す場所がない。
4人スペースなのにフックが3つ。
とりあえず、フックにザックをかけてみたが、重さでちぎれそうなので、やはり下に置くことにした。
落ち着いたら、まずはビールだ。
雨なので外のベンチでは飲めないが、食堂が解放されているので、場所はO君が確保してくれた。

私はビール購入係になったが、受付のスタッフが1人しかいない上に、ちょうど小屋に到着した人々が集中して、随分待たされた。
ちょっきりの金額を持っていたので、お金とビールを見せて、「持って行っていいですか?」と後ろから叫んだが、あっさり「ちょっと待ってください」と却下されてしまった。
かなり時間がかかったが、とにかく今日1日の無事に感謝して乾杯。

乾杯の後、ちょっとトイレに。

その後、酒宴を再開していたら、小屋のスタッフが「どなたか、トイレのスリッパ履いたまま出た人いませんか~?」と言いながら入ってきた。
心当たりがないので、とくに反応しないでいたら、私の足元を見とがめて、「勘弁してくださいよ~」と不機嫌そうに言って、スリッパをはぎ取っていった。
私が悪いのだが、そんな言い方はないだろう。
誰しも、ついやってしまうことじゃないか。
少ないスタッフしかいないのに、余計な仕事を作るなという気持ちは分からないではないが、客商売なのだから、「気をつけてくださいね~」くらいにしてほしい。
あまりの早業に、こちらは「すいません」を言う暇もなかった。
まあ、そんなことは気にせず、明日のことを検討しながら酒は進む。

そのうち、聖岳(3013m)がだんだん見えてきた。
明日はかなりの長丁場。コースタイムは10時間だ。
この暑さでは、どうせ今日のように朝8時にはガスが出て、何も見えなくなり、午後2時には雨が降り出すだろう。
ガスの中、荒川三山を歩いて、しかも終盤雨に当たるのでは、ばかばかしい。
千枚小屋まで歩く予定だったが、手前の中岳避難小屋もレトルトの食事提供はあるというので、天候次第では、そこに泊まって、翌朝の晴天の中、荒川三山を歩こう、そんな方針にした。
話をしていると、単独男性2人が相次いで、「相席していいですか」と同席してきた。

無論、大歓迎。
二人とも若い頃から、山をやっている人で、いずれも御年67歳。
かつての山岳部のしごきなど昔話に花が咲いていた。こちらも興味深かった。
一人は、登り残した大沢岳を登るためだけに来たというので、ぜひここから直登するように薦めたが、分岐からピストンすると言っていた。その方がコースタイム的にも早いらしい。
「山と高原地図」で計算してみると確かに、たった5分だけど早かった。
食事の時間直前になり「準備がありますから、一旦、部屋に引き上げてください」との指示。
私はまだカップにウイスキーが残っていたので、それを飲み干すまで、食堂の前のストーブスペースにいた親子連れと雑談をしていた。

昨日、聖平小屋の食堂でみかけたグループだ。
昨日は1人欠けていたが、今日は3人そろっていた。
一人、完全白髪の人がいたので、3世代かと聞いたら、大人2人は友人同士でしかも同じ年だった。とんだ失礼を。
子供は小6くらいに見えたが、中3とのこと。
「受験なのに山に連れて来られた」と不服を述べていたが、それほど嫌そうでもなかった。山は好きらしい。
父親も「5日くらい休んだって変わらないよ」と太っ腹。
母親とお姉さんがいるようだが、女性陣はあまりアウトドアは好きではないらしい。
彼はバスケット部で、わりと強い学校なのだとか。
食堂は16人入れるが、8人ずつ15分おきに呼ばれるシステム。
ここの名物のカツをアツアツのまま食べられるようにという配慮だ。
我々は2番手で5:15に飯にありつけた。

疲れた体にカツは本当に力になる。確かにおいしかった。
ここは60人収容なのだが、静岡高校山岳部24人と、NHKのクルー10人弱が入っているので、かなり混んでいた。
山岳部は基本テン泊なのだが、3000円払って東海フォレストのバスで来ている以上、どこかで1泊しなければならない。
とはいえ、食事は自炊なので、女子たちが「カツ食べたいよ~」とぼやいていた。
雨はどうやら上がったようなので、少し外を散策。
小屋の裏には大沢岳が姿を現していた。

周りはトリカブトとハクサンボウフウのお花畑。

南には聖岳もすっかり姿を現していた。

小屋関連の用途不明の建物。

裏から見た百間洞山の家。

ここから聖平小屋までは6時間弱とのこと。

小屋の前にはいくつもベンチがあったが、さっきの雨で濡れているので誰も使用していなかった。

沢の奥にはテン場があるが、ここからは見えない。

この小屋はアイスクリームも売っているらしい。

小屋の看板を撮ろうとしてシャッターを押したら、NHKクルーの一人、山岳ライターの小林千穂さんが写っていた。ブルーのTシャツの方である。

小屋の中もちょっと探検。なかなかよさげなTシャツや手ぬぐいだが、荷物になるし、どうせ着ないから買わない。


食後部屋に戻って、しばらく片付けをしているうちに、O君はもう寝てしまった。

こちらもひと眠りしてから、また食堂に行ってみると、NHKクルーの面々が雑談していた。
タレントの金子貴俊さんも小林千穂さんもいたが、恥ずかしくて声はかけられなかった。
食堂を出て、ストーブスペースのベンチに座り、しばらくスマホに今日のメモを残したりして過ごす。
ここは圏外なので、通信はできない。
その後個室で頑張っていたら、「8時で消灯ですが、ヘッ電持っていない人いますか~?」との声。
「はーい、持ってませんけど、もう出ます」と答えたが、個室を出たら、真っ暗だった。
だったら聞く意味あるのかい!
本当に真っ暗なので、スマホの光でなんとか部屋に戻った。
部屋はお互いに足を延ばすとぶつかってしまうので、少しずつズレて寝ることになった。
その分スペースは昨日よりはあったのだが、ザックをO君との間に置いたので、ちょっと狭くなった。
シュラフに入ると、窓の外がひっきりなしに光っている。
雷鳴は聞こえないが、稲光は1時間近く続いたかもしれない。
この日はなかなか寝付けなかったが、気づいたら10時半。少しは眠れたようだが、なぜか顔がほてって、喉も渇いている。
タオルを持って、そおっと階下の洗い場に下りた。
本当はコップを持って行きたかったのだが、ハイドレーションを入れておいたビニール袋がバリバリうるさいので、それは諦めた。
水は手ですくってのみ、顔を洗う。
濡れタオル状態にして、持って帰り、額に載せて寝た。
その後も何度か目が覚めたが、それでも睡眠はとれたようだ。
【行程】2016年8月5日
聖平小屋(4:57)~薊畑(5:25)~(5:39トイレ5:45)~小聖岳(6:14休憩6:25)~聖岳(7:23撮影7:31)~奥聖岳(7:46撮影7:58)~聖岳(8:13休憩8:32)~聖兎のコル(9:27休憩9:39)~兎岳避難小屋(10:19撮影10:24)~兎岳(10:35昼食10:51)~小兎岳(11:38休憩11:56)~中盛丸山(12:43休憩12:46)~大沢岳(13:20)~百間洞山の家(14:07)
※所要時間:9時間10分(歩行時間:7時間20分)コースタイム:8時間55分
※登った山:7座(小聖岳、聖岳、奥聖岳、兎岳、小兎岳、中盛丸山、大沢岳)
※歩行距離:10.1km
【2016年8月5日(金)】南アルプス南部
中盛丸山(2807m)から大沢岳(2819m)へと縦走中。

中盛丸山を振り返る。

これがその全容だ。

鞍部に到着。

このすぐ先が、百間洞山の家に直接向かう巻き道との分岐だ。

ここからは110mほどの登り返し。

急いで突入する。

振り返ると、西から猛烈なガスが押し寄せてきていた。


その中を、後に残してきたO君が追いかけてくる。

前方は双耳峰の大沢岳の頂上がかろうじて見える。

分岐で、O君は巻き道を行ってしまった。

大沢岳には寄らない彼には、先に宿泊の手続きなど済ませておいてもらうつもりだ。
手を振ったが、気づいてくれなかった。
こちらもあまり遅れるわけにもいかないので、心持ち早めに歩く。

右手は赤石沢の源頭部。

これは稜線から外れた別のピーク。

百間洞下降点(分岐)から8分ほどで、大沢渡分岐。

標柱には、特種東海製紙の社有林の範囲が示されていた。めちゃめちゃ広い。

ここを左折すると、唐松山(1960m)を経て、林道跡を横断し、大沢渡小屋に至る。

この標柱に「しらびそ峠」と書いてあるのを見つけてびっくりした。

しらびそ峠に行くには、大沢渡小屋を過ぎ、いったん谷底まで下って、また登り返し、延々と林道を歩かなければならない。
そのルートのうちほとんどは地形図に破線があるだけで、「山と高原地図」には破線も示されていない。
道は今も生きているのだろうか。
こちらは直進なので、とりあえず関係ないのだが。

ここで、カメラのバッテリーが切れてしまった。
残量表示が1本になってからすぐだったので、ちょっと愕然とした。
2日目の途中で電池切れになるとは。
バッテリーの予備は一応持ってきているが、これでは全行程4日間はもたない。
おそらく最終的にはコンパクトカメラの出番になるだろうが、やむを得まい。
ちょっと進んで、今の分岐を振り返る。

しばらくはガレ場の登りだ。

背後はどんどんガスに包まれてゆく。

まずは1つ目のピークに到達。

鋭い岩の稜線だ。

う~ん、やばい。とうとうこちらにもガスが進出してきてしまった。

振り返ると、もうガスに霞んでいる。

あれが頂上だろうか。

こういう時はミクロの目を持つしかない。

これも紅葉の一種なのだろうか。

岩峰のピークはすぐそこ。

一番、高いところに出たような気がするが、標柱などは何もない。

と思ったら、すぐ先にあった。双児峰の2つ目が頂上だった。

三角点もしっかり存在をアピールしていた。

でも、ガスで真っ白。

雨が降っていないだけマシかもしれない。

西側は厳しい断崖である。

長居は無用なので、前進。

岩場に沿って歩く。


ガスで見えなくなる前に振り返っておく。


いったん岩場とはさようなら。

こんなところにも、たくましくキノコが。

うわ、おそろしや。

すぐまた次の壁。

振り返っても怖い。

一つ一つ乗り越えていく。

振り返ると、すごい絶壁。

ありゃ、また雨が落ちてきた。

でも、構わず前進。

しばらく尾根伝いに進み、次のピークの手前で右へ折れて、本格的な下りとなる。

その途中で、再びもよおしてきた。
今朝残しておいた分が活動を始めたようだ。
まわりを見回しても完璧な適地はない。
やむなく、登山道横の平場で致した。

人から見える場所でしたのは初めてだ。
ガスが身を隠してくれたし、幸い誰も来なかった。
すっきりして小屋へ急ぐ。

ハイマツの斜面に筋状にのびるガレ場を下る。


これは晴れていたら、ものすごい眺めだろう。

でも、いきなり雷鳥さんを発見。

南アルプスの南部にもいたんだ。うれしかった。

しばらく、私の目を楽しませてくれてから、ハイマツの中に潜り込んでいった。

私もハイマツの道に突入。

一応、ピークらしきものが見えるうちに振り返っておく。

下も真っ白で全く何も見えない。

足場は悪く、飛び石を伝うように下る。

ガスさえなければ目の前には赤石岳(3120m)がど~んとそびえているのだろうなあ。

そんな風景を想像しながら、ひたすら下る。

小屋までの標高差は頂上から約360m。

ほぼ直滑降だ。

登りはかなりしんどいだろう。

ここはかなり低いところまで森林限界だ。

ゴーロを飛ぶように下って、小屋を目指す。

でも目標は全く見えない。


いや、テントらしきものが見えてきたぞ。

やっとガスの下まで下りてきたみたいだ。

おお、やっぱりテン場だ。

小さなダケカンバが樹林帯への導入。

大沢岳の東斜面は一面のハイマツで覆われていることが分かる。

さあ、いよいよ樹林帯。

標高は2500mほどなので南アルプスの森林限界としては低い方かもしれない。

しかし、このあたりからとうとう雨が本降りになり、雨具を着ざるをえなくなった。

カメラは小屋までもう少しということで、そのまま使用を続ける。
やっと百間洞の沢まで来た。

(つづく)
【2016年8月5日(金)】南アルプス南部
山頂で15分ほど休んで、小兎岳(2738m)を出発した。

ここからは、100mほど下る。

さっき下りて行ったグループを追いかける形になる。


いい感じの道だ。


でも、行く手はガスに阻まれている。

ハイマツの稜線だ。

ずっと森林限界だから、晴れていれば最高の景色なんだろうけど。

まあ、近距離のところが見えるだけでもマシか。

アキノキリンソウ。


ハクサンフウロ。

シャクナゲハイマツという名前を付けてあげたい。

大沢岳(2819m)は完全に雲の中。

数字とローマ字の意味がよく分からない。

下り切ったコルは樹林帯。

登り返すと、すぐにハイマツとなり、左折。

ガスだと、こういうペンキの道案内は助かる。

さて、いよいよ中盛丸山(2807m)に取り掛かる。

まだ、この段階では、この山の怖さを知らない。

イワツメクサ。

ガレ場を進む。

ここからが本格的な登り。

歯ごたえ十分だ。

振り返ると、うっすら浮かぶ小兎のシルエット。

このガレ場、登りが果てしない。

小兎かと思ったら、すぐそこの小ピークだった。

登り返しは170m程度なのだが、その倍はあるように感じる。


ペンキに従って、着実に。

仰ぎ見ると、なかなか荒々しい。

先が見えない分、いいのか悪いのか。

虫食いもここまでいくと芸術的だ。

タカネツメクサ。


ハクサンフウロ。

まだかよ、まだかよ。

いったん露岩帯を離れる。

シナノオトギリのつぼみ。


このあたりは御花畑だ。

ヒメシャジン?

ミヤマホツツジ。

一瞬、ガスが晴れた。

よく目立つ地衣類。

頑張って尾根を目指す。

先が見えたが、まだかなり遠い。

さっき赤い斑点を見たが、今度は黄色い病気か。

ヨツバシオガマ。

アキノキリンソウ。

タカネツメクサ。

さあ、あのあたりが頂上なのだろうか。

これは頂上の南西に張りだしたテラス。

百間洞山の家に向かってます。

ミネウスユキソウ。


ほとんど土のないところに咲いている。

アワモリショウマ。

イワツメクサ。

やっと尾根に出た。

尾根にのれば、山頂はすぐそこ。


人が何人かいるところが中盛丸山の頂上だ。

小兎岳から45分ほどで到着。

早速、先客が下りていく。

ここからの下りも100mほどだ。

大沢岳は中腹しか見えない。

ひとまず休憩する。想像以上にきつかった。

岩場も多く、O君はかなり応えたようだ。
「丸山は嫌いだ」と言っていたくらいだから。
この先の大沢岳をどうするかだが、O君は「水が心配だから」ということで直接、巻き道で小屋へ向かうという。
私はもちろん、目の前にあるピークを見過ごすことはできない。
先に出発して、もう1ピークに挑んだ。

まずは、さくさく下る。

だんだん大沢岳の頂上も見えてきそうだ。


馬の背の大崩落。

浮石だらけなので慎重に。

一気に駆け下りたくなるけれど。

百間洞のテン場に黄色いテントが一張出現。

本日、最後の山だ。

左は相変わらず切れ落ちている。

でもガスガス。

薄くなる瞬間もあるけれど。

帰りは東斜面を下るわけだが、かなりの急傾斜だ。

おお、だんだん全容を現してきた。

馬の背が姿を現すのは期待うす。

大沢岳は双耳峰。

こちらはガスが晴れてくれて、うれしい。

鞍部。

西斜面は山が生きていることを感じさせる。

振り返ると、O君はもう下り始めていた。

あんまり急がなくていいよ~

大沢岳、なんとか大丈夫かな。

あら、馬の背も見えてきたではないか。

なんか何枚も撮ってしまうなあ。

(つづく)
【2016年8月5日(金)】南アルプス南部
10:35、兎岳(2818m)に到着。

タカネビランジに迎えられた。


ここで、やっとO君に追いついたので、ともに早めの昼食とする。
早めと言っても、朝食を食べてから、もう6時間も経っている。
聖平小屋でお願いしたお弁当は、稲荷寿司だった。

好物ではあるのだが、お新香とかちょっとでも添えてあるとよかったなあ。
でも、美味しくて、3個ともぺろりと平らげてしまった。
でも、O君は1個食べただけで、「もう食べられない」という。
食べるには水が必要で、水が小屋まで持つか心配らしい。
「食うか」と薦められたが、O君も後でお腹が減るだろうから、一応お断りしておいた。
食べているうちに、雨がポツポツ落ちてきた。
雨具を着ようかと思ったが、まだ早いと判断し、ザックカバーだけにとどめる。
カバーをすると意味がなくなるので、ここで朝から付けていた蚊取り線香を消した。
そもそも、そんなに虫はいなかった。
お隣もお昼にしているようだ。

あちらに往復15分で三角点(2799.8m)があるようだが、ガスで何も見えないし、今回はパス。

進行方向も真っ白だ。

昼食を終えたところで腰を上げる。

休憩はほんの15分ほどだった。

つづら折りのザレ場を下っていく。

かなり浮石が多い。

この下りは標高差160mほど。

この方は赤石岳(3120m)山頂の小屋からだろうか。

見えてきたのは小兎岳(2738m)か。

いや、その手前の小ピークだ。

登り返しは、それなりにきつそうだ。

こちらも登る人はしんどそうだ。

このくらいの傾斜があるので。

兎岳を振り返る。

前方からもどんどん登山者が登ってくる。

ちょうど小屋と小屋の中間地点ですれ違いやすい場所なのかもしれない。

お昼を食べている間に先行された静高女子にまた近づいてきた。

時々、前小兎(私が勝手に命名)が姿を現す。

コルで彼女たちが小休止。

頂上で落ちてきた雨はすぐ止んだのだが、またポツポツきた。
一部の人が雨具を着たようだ。

我々もコルまで下りてきた。

右手は深い谷になって切れ込んでいる。

左も似たような状況。

早速、登り返しだ。

相変わらず、浮石が多い。

一歩一歩、踏みしめて進む。

斜面は所々、岩がむき出し。

引き続き、静高女子を追う。

ここでまた兎岳を振り返る。

東側の谷。

う、だんだん雨脚が強くなってきた。

でも、我らはまだ我慢。

あのザック、本当に重そうだなあ。

兎岳山頂。一瞬だけ見えた。

左に尖った小ピークが見える。登る時に見えたとんがりだ。

ちょっとアップにしてみよう。

道はいったん傾斜が緩む。

女子たちはまた抜かさせてもらった。

残りの人も雨具を着たようだ。

前小兎のピークに到着。

前方に小兎本峰が望めた。

でも、ガスが濃く、その先は何も見えない。

下り返し。なんて言わないか。

なんかガスだと、せっかくの南アルプスがもったいない。

ただ、南アルプスの2800m級の山は山容がやさしい。

一服の清涼剤。

これは私の好きな葉っぱだ。


なんかのデザインのよう。

今の下りを振り返る。

早くもアキノキリンソウ。

ハイマツの根っこの墓場。

さて再び、登り返し。

ハイマツ対コケ。

小兎山頂へ最後の登り。

お互い、かなり疲れてきた。

あとは、山頂までなだらかだ。

山頂のすぐ西にある小ピーク。

あれが山頂。

花がなくても美しいものは美しい。

兎岳から45分ほどで、小兎岳に到着。コースタイム通りだ。

大沢岳(2820m)方面。

依然として、眺望ははっきりしない。

取りあえず、ここで小休止。
O君はお稲荷さんを1つ食べて、もう1つはもらうことにした。ごちそうさま。
振り返ると、兎岳のシルエットが浮かび上がった。

おお、しかもあれは聖岳(3013m)ではないか!

標柱とともに人影が確認できる。

このカットでは奥聖の方が見えている。

その右下に聖兎のコル。

赤チャートの岩盤も見える。

一連の稜線。

葉っぱちゃん。

兎岳がやっと、すべてをさらけ出した。


目を進行方向に転じると、百間洞のコルがまずは確認できる。

小屋はかろうじて見えないが、あの階段状になっているのはテン場だろう。

ん、次のピーク、中盛丸山(2807m)も見えてきそう。

これは赤石岳(3120m)の肩、馬の背方面。

あちこち撮影しているうちに、兎岳でお昼を食べていたグループが通過して行った。

おっと、静高女子も追いついてきた。

ほかのグループも来たことだし、それを潮に我らも出発することにした。

(つづく)
【2016年8月5日(金)】南アルプス南部
聖岳(3013m)から兎岳(2818m)に向かっている。
聖兎のコルの手前でチャートの岩盤が出現。

それが崩れたガレ場を下った。

そこが聖兎のコル。頂上から1時間弱で着いた。ほぼコースタイム通り。

付近には、ちらほらとお花が咲いている。
ウスユキソウ。

ウメバチソウ。

イブキジャコウソウ。

今、下ってきた斜面を振り返る。

こちらはこれから登る方向。

すっかりガスに包まれてしまった。

取りあえず小休止としよう。

右足の小指がまた擦れてきたので、ソックスを脱いでテーピング。これでだいぶ楽になった。
その間にも、聖岳からどんどん登山者が下りてくる。

ここで休む人が多く、狭い場所にかなりの人口になってきたので、腰を上げた。

10分ちょっとの休憩で出発。

まずはなだらかな登り。

このあたりはかなり雪が積もるのだろう。

改めて振り返ると、さっきの岩盤はほとんど岩の壁だ。

すぐに急登だと思っていたのに、小刻みなアップダウンが続いてなかなかガツンと登らない。

そのうち、あたりはすっかりガスってしまった。

迷いながら成長したダケカンバ。

トリカブト。

岩肌にはタカネビランジ。


少し色が付いているのはオンタデ。

ハクサンフウロ。

トリカブトの小径を進む。

ずっとトラバースばかりだ。

再び、静高女子に近づいてきた。

尾根の右側は緑。

左側は崩落地形。

ミヤマオトコヨモギ。

少し坂がきつくなったあたりで

静高女子を目前にとらえた。

ウスユキソウ。


ヤマハハコ。

時々見る、この葉っぱの赤みは病気なのだろうか。

オトギリソウ。

時々、振り返ります。

さあ、やっと本格的な登りかな。

そのようだ。気合を入れて行こう。

登っては、振り返り。

岩場は格好のお花畑のようだ。

ローソク岩(仮名)。

静高女子に追いついたので抜かさせてもらった。


あの岩が当面の目標。


聖岳も完全に霧に包まれた。

結構ガスが濃い。

再びハイマツ帯に入る。


ガレ場をしばらく進む。


目標としていた岩が近づいてきた。

一つではなく、ギザギザといくつもあった。

これはトラバースではなく、まっすぐ登る。

よいしょっと。

すると、また次の目標ができてしまった。

と思ったら、あまり関係のないピークで、なんか標柱のあるところに出た。

「ここは兎平避難小屋」と書かれている。

どこに?と見渡したら、左手にあった。

O君には先に行ってもらい、見学に出かけた。

単独の高齢女性が一人付いてきたので、彼女も見学かと思ったら、今日はここで泊まるという。

女性1人で泊まるような場所ではないのだが、本人はあまり気にしないのだろう。
コンクリートブロックづくりだが、崩れかけている。

でも中を覗くとわりと清潔だった。2009年に補修済みという記載が「山と高原地図」にある。

彼女は、「昨夜も女性が1人で泊まったみたいですよ」と話していたが、誰に聞いたのか。
まだ10時すぎなのだが、「これからこのガスの中、5時間かけて聖平まで歩くのは、いやだから」という。
時間があるなら、その方がいい。
でも、これから一晩ここで過ごすとなると時間をもてあますだろうなあ。
周りはちょっと不気味なお花畑だった。

こんな淡い紫一色の花は初めて見た。テガタチドリだそうだ。

ミヤマアキノキリンソウ。

避難小屋の背後にある岩壁。

さて、私も出発しましょう。

ガスで何も見えないから、めげるが。

登山道まで戻った。


では、O君の後を追いましょう。

この先も急登である。

右手に小ピークが見える。

岩場にタカネビランジ。

かわいい葉っぱに思わずパチリ。

さっき見えた小ピークのあたりまで登ってきた。

ハイマツの白骨を通過。

頂上はガスで見えない。

下もガス。

例の小ピークはあんなに尖っていた。

ちょっとアートっぽい。

シャクナゲ。

ウスユキソウ。

タカネコウリンカ。

ハイマツの中を登る。

すると、あっけなく頂上の標柱が見えた。

(つづく)
【2016年8月5日(金)】南アルプス南部
奥聖岳(2978m)ピストンを終え、聖岳(3013m)山頂で休憩中。

改めて、頂上からあちこち撮影。眼下に兎岳(2818m)の避難小屋が見えた。

あれが兎岳の山頂。

奥聖はもうガスに隠れてしまいそう。

静岡高校山岳部の女子たちは先に行ってしまった。
百間洞の向こうに見えるのは、鳥倉山(2023m)。その手前の突起はたぶん除山(2041m)。

大沢岳(2819m)。

その山頂部。

そこから急斜面を下ると、今宵の宿、百間洞山の家。

西の空にも雲がどんどん湧いてきた。

15分ほどのんびりしたので、そろそろ出発することにする。時刻は8時半。

ここからまずは400mほど一気に下る。最初はなだらかな下りだ。

下り始めてすぐ、聖岳山頂を振り返る。これはお約束。

ミヤマダイコンソウがお見送りをしてくれた。

ゆっくりO君の後を付いていく。

恐竜の背中のようだ。

後方には、奥聖への平らな稜線が見える。

コケモモの中に咲くウサギギク。

前方はるか遠くに奥茶臼山(2474m)。その右奥は前茶臼山(2331m)。

こちらは徐々に高度を下げていく。

静高女子に随分遅れをとってしまった。


じわじわと差を詰めて行こう。


再び振り返る。頂上はまだ見える。

ただ、かなりガスが上がってきた。

下るにつれ、兎岳の大崩落が全容を現してきた。

三つの赤いザックが何だか、かわいい。

真ん中で黒く尖っているのは、あとで苦労させられる中盛丸山(2807m)。

ちょっと違った角度で。

イワギキョウ。

左手の断崖。


右手の深い谷。赤石沢の源頭の一つだ。


光岳(2591m)方面にもかなり雲が湧いている。

ちょっとしたこぶを越える。


よいしょっと。

とんがり。


ちょっぴりトラバース。

まだ聖の頂上は見えている。

さっき上から見えたザレ場に出た。

結構、いくつかのこぶを越えてきたみたいだ。

今度はハイマツの海を下る。


次のこぶも見えた。

え~っ、大沢岳(2819m)方面にガスがかかってきたぞ~

兎岳にも流れてきている。

その代り、左後方に小聖岳(2662m)と上河内岳(2803m)が見えてきた。

このあたり、かなり崩落が激しい気がする。


さすがに造山運動の激しい南アルプスだ。


登山道もハイマツ帯に突入。

これはミヤマセンゴかな。

白骨化したハイマツの根を乗り越え、さらに下る。

兎岳には何とか頑張ってほしい。

ザレ場を一直線。

崩落すると雨裂の発達も早い。


単独の登山者とすれ違った。百間洞からだろうか。かなり速い。

これから、あの断崖の縁を歩く。

あそこも今にも崩れそうだ。

道は多少ザレているので膝には優しい。

これが最後のこぶかな。

なかなかアルペンムードたっぷりだ。

小さなコルから兎岳の西尾根を望む

またまた振り返り。


ウサギギク。

右手はハイマツ時々岩。

大沢岳との重なりが解消されて、中盛丸山の円錐が目立ってきた。

(438)
しかし、兎岳が早くも雲の中に・・・


めずらしくゴゼンタチバナ。

兎岳の絶壁。

赤色チャートの大規模な岩盤が出現。

ここは、かなりの急坂になっていた。


朝露をのせたシャクナゲとナナカマドの葉っぱ。


ミヤマホツツジ。

岩肌のミヤマダイコンソウはもう散っていた。

岩盤の溝にはコケ。


登山道も赤色チャートの石畳状態。


ほんとに真っ赤だ。

周りの岩もみなチャート。


お、静高女子にだいぶ追いついてきたぞ。

あれはホシガラスかな。

標高が少し低くなって、たいぶ木々の背丈も高くなってきた。

ここにも岩盤。

ミヤマダイコンソウはよく見かける。

ハクサンボウフウ。

ウスユキソウ。

ここからチャートの岩場を下る。

かなり急だ。

途中に、イワツメクサとシナノオトギリ。

このあたりの巨岩も転がり落ちそう。


激しく亀裂も入っている。


その亀裂を狙って植物が生えている。


聖兎のコルはもうすぐだ。

(つづく)
【2016年8月5日(金)】南アルプス南部
聖岳(3013m)の頂上は間近。
静岡高校の生徒たちも必死に食らいついている。

上河内岳(2803m)もその全容を見せてきた。

やはり富士山は素晴らしい。

眼下に見えているのは、聖平小屋のトイレ。

頂上付近の景観。

基本的にはハイマツとガレ場だ。

右手には、何だか不穏な雲が湧いてきた。

大きくならなければいいのだが。

左はたぶん信濃俣(2332m)。

聖平と今歩いてきた稜線。

聖平小屋の母屋(右)もやっと見えた。

と思ったら、頂上台地に乗った。時刻は7:20。
コースタイム2時間50分のところ、2時間25分。今日も調子がいい。

正面に赤石岳(3120m)の巨体が初めて見えた。

残念ながら、ちょうど頂上にガスがかかっている。タッチの差だった。

その左肩奥に覗くのは荒川前岳(3068m)の大崩壊地。

そのさらに左奥にそびえるのは仙丈ヶ岳(3033m)。

左手前には、中盛丸山(2807m)と大沢岳(2819m)。これから歩く稜線だ。

その左の突起は、おそらく奥茶臼山(2474m)。

その手前に小兎岳(2738m)。

これは赤石岳の百間平と馬の背。

右(東)に目を転じると、奥聖岳(2978m)。標柱が見える。

頂上は左へ100mほど。

はい、聖岳登頂。この標柱は山梨仕様かと思っていたら、ここは静岡・長野の県境なので必ずしも山梨に限らなかったようだ。

こちらは特種東海製紙仕様。

これから行く兎岳(2818m)が間近に見える。

これは三角点ではない。実は聖岳に三角点はなく、奥聖にある。

目を凝らすと、奥茶臼山の向こうに中央アルプスが見えた。

改めて百間平。

その左下の谷底に百間洞山の家の赤い屋根がかろうじて見える。今宵の宿だ。

再び大沢岳。

ああ、赤石岳はもうすっかり雲の中。まだ8時前なのに早すぎる。

さっきは気づかなかったが、荒川前岳の崩壊地の向こうに塩見岳(3052m)の鉄兜が見えるではないか。

この方位指示盤はちょっと見づらかった。

ひと通り山頂からの眺望を楽しんだところで、ザックをデポ。
奥聖までピストンすることにする。めずらしくO君も行くという。

空身でさくさく進む。

まずは山頂を振り返っておこう。

足元は結構な岩場で、かなり歩きにくい。

しかも、こちらにまでガス上がってきた。


足元の小さな葉っぱはまだ朝露に濡れている。

左後ろに大沢岳と百間洞の谷。

その左は、右から兎岳、小兎岳、中盛丸山、大沢岳と連なる稜線。

しばらく行くと、小規模な二重山稜のようになっている。

ちょっとした御花畑だ。これはミヤマダイコンソウ。

チングルマはもう綿毛。

赤いチャート。

ウサギギク。

5分ぐらいで行けると勝手に思い込んでいたが、意外に遠い。

二重山稜の谷間には、チャートが目立つ。


最後は、やはりひと登りしないといけないようだ。

ハイマツを突き抜けた岩峰。

聖岳方面を振り返ってみた。もう頂上は見えないし、南からガスが迫っている。

一面のチングルマだ。

小さなオンタデ。

さあ、最後の登り。

その前にもう一度、振り返り。


また聖岳の頂上が見えてきた。

赤石岳はすっかり雲の中。もう諦めるしかない。

こっちも雲だ~

改めて見ると、堂々たる山容の兎岳。

赤石岳から南に延びる稜線。

奥聖岳の三角点到着。結局、聖岳から15分もかかった。

改めて地図を見ると、コースタイムは20分だった。

標柱の裏には、このあたりの山々がすべて「特種東海製紙」の社有林である旨の説明書きがある。いわゆる大倉財閥だ。

その横にケルン。

この先は急に切れ落ちている。

聖岳東尾根は「山と高原地図」では破線扱いで「冬季コース」との注意書きがある。

これは北に延びる尾根。

雲がどんどん湧きてきた聖岳の南斜面。

聖岳の頂上は若干、人が増えてきた気がする。

百間洞山の家。

その下の谷を流れるのが百間洞。

これは何だっけ。


さて戻るとしよう。だいぶ稜線もガスに包まれてきた。

聖岳もガスに負けそうだ。

たった今歩いてきたばかりの二重山稜を引き返す。

この白い植物も、名前は分からない。

チャートの巨岩。

厄介な岩場。来るときも苦労した。

まあ、登りはそれほど気にならないんだけど。

他にも何人かが奥聖にも足を延ばしてきた。

復路はめずらしく、O君より前を歩いています。

これを越えれば頂上が見える。

ほらね。

戻ると、静高の生徒たちが到着していた。

女子は縦走路をまっすぐ兎岳方面に下り、男子は空身で奥聖に向かった。


こちらは時間に余裕がありすぎるということで、少々休憩。

芋のお菓子を食べた。
(つづく)
【2016年8月5日(金)】南アルプス南部
聖平小屋から小聖岳(2662m)を目指している。
頂上に近づいて、右手に見える上河内岳(2803m)も大きく見えてきた。

左手には、しらびそ峠の稜線。その向こうに金森山(1703m)が見える。

おお! うっすらと富士山が見えるではないか! やった~!

南アルプスからの富士山は、両耳がつんと尖っているのが恰好いい。

上河内岳へ向かう稜線。手前は南岳(2702m)。

さっきは仁田岳ではないかと思っていたが、あれはその向こうにある信濃俣(2332m)ではないか。

6:15、ほとんど文字が読めないが、小聖岳に到着。

目の前の聖岳がでかい。

ど迫力のこの岩肌。

左に見える兎岳(2818m)など子供のようだ。

ここで高校生の集団と遭遇した。

聞くと、静岡高校山岳部だという。20人以上いる。
小屋を出る時に、まだ薄暗い中、下から登ってきた人たちなので、何時に登山口を出発したんだろうと不思議に思っていたが、4時半に聖平を出たという。
そうか、小屋から見えないところにテントを張っていただけだったんだ。
てっきり、深夜から歩いてきたのかと思った。
しばらくして列になって出発して行った。

こちらは、もうちょっと休憩。

改めて富士山を眺める。

富士山の左手前にあるなだらかな稜線は布引山(2584m)。鞍部は所の沢越で、右のピークは稲又山(2405m)。

光岳(2591m)方面。

しらびそ峠。

では、そろそろ行きますか。

聖岳も随分、日が当たってきた。

小聖岳を振り返る。ピークというより肩だ。

長野県側の峰々。何気なく私の影が写っている。

東聖岳(2800m)かな。

もう一度、小聖。

前方の断崖の縁を高校生が登っていく。

こうして見ると、人間は本当に小さい。

青いアリの行列のようだ。

赤いザックは女子なのかな。

山頂までは標高差であと350m。

頑張れよ~!


左手は深く切れ込んでいる。

朝露に濡れたイワギキョウ。

本当に岩から生えていた。

我々も断崖の縁を行く。

小聖の次のピークを振り返る。

聖沢の谷と上河内岳。

目の前に迫る断崖。

そこに白いタカネビランジが咲いていた。

だんだん聖岳が迫ってくる。

天気もよく、快調だ。

小聖もだいぶ下になった。

いやあ、ほんとにすごいね。クライミングする人はいるんだろうか。

色が岩と同化してしまっているが、イワギキョウ。

これはタカネツメクサ。

岩肌にも日が当たってきた。

だんだん高校生たちに近づいてきた。

遠山川の谷と光岳(左)。

ここからが本番。あとはずっと急登だ。

あのあたりが第一関門。

苔平(左手前)と奥は池口岳(2392m)方面。

聖岳頂上を仰ぎ見る。

静高山岳部アタック隊。

とうとう追いついてしまいそうだ。

日蔭にウスユキソウ。

聖岳にこんな表情があるなんて想像もしていなかった。

ガレ場を黙々と登る。

振り返ると、これまで小さなこぶをいくつか越えてきたことが分かる。

お花密集地帯。

横からみると、こんな崖だった。

高校生に追いついたので先に行かせてもらった。

1年生は女子もみな20㌔のザックを担いでいるとのことで、そもそもペースは速くない。
シゴいているような様子は全然見受けられなかった。顧問の先生も一緒だったし。
さて、抜かすと解放感。前にはO君以外だれもいない。

右手は稲又山(左)と青薙山(右、2406m)。

上河内岳の雄姿。さすが200名山。

道はガレ場からザレ場へ。

後ろに追いついてきたのは、聖平で見かけた、奥さんが空身のご夫婦。

南アルプス最南部を遠望。

高校生たちのザック、本当に重そうだ。

それでも脱落者もなく頑張っている。

断崖の上まで来ると、すこし風景がやさし気になってきた。

そろそろハイマツのお出迎え。

上河内岳(左)と茶臼岳(右)。その奥に見えているのは大無間岳(2329m)。

ミヤマキンバイ。

だいぶ頂上が近づいてきたぞ。

南アルプス南部の眺め。

その左。

高校生たちも必死で登ってくる。

富士山が布引山の真上に来た。

さすがに3000mに近づくと植物が少ない。

再び空身のおばさん。全然楽そうだ。やっぱり少しくらい持てばいいのに。

お、聖平小屋が見えてきた。

小聖からの道を振り返る。

池口岳と思われる。

イワツメクサ。

それにしても、なんていい眺めなんだ。

(つづく)
【2016年8月5日(金)】南アルプス南部
聖平から登り始めると、間もなく御来光。日の出は5:09だった。

かすかなモルゲンロート、聖岳(3013m)。

目の前は真っ赤っか。

上河内岳(2803m)は逆光なので、黒いまま。

でも、間もなく空が青くなってきた。

このあたりはマルバダケブキの群落。

この黄色いのはキオン。

後から来たご夫婦には先に行ってもらった。

私が何度も立ち止まって、写真を撮るものだから、O君がペースを落としてくれたのだ。
申し訳ない。
それにしても、奥さんの方は完全な空身。それほど大きくはないが、すべての荷物をご主人が持っていることになる。きっと聖岳ピストンなのだろう。
「やさしい旦那さんだねえ」とO君に話しかけると、「全く信じられないね」と否定的だった。なかなか厳しい。
モルゲンロートが赤から黄色に変わり、朝陽に照らされた木々は紅葉しているようだ。


地味にアザミ。

キオンの花道。


聖岳を望む。

キオンとトリカブトは相性がいい。

聖平のピーク。

シカ柵を通過。

シカの食害に遭ったニッコウキスゲの復元を目指して設けられたものだ。

とはいえ、もうニッコウキスゲの季節ではなく、イブキトラノオの大群落が守られていた。

ご夫婦はもう随分先に行ってしまった。

空がほんとに真っ青。今日もいい天気だ。

ちょっと元気がないが、タカネナデシコ。

もう、すっかり朝になった。


朝陽に輝くウメバチソウとミヤマアズマギク。


そしてタカネオミナエシ。

2478mピークに向かってなだらかな登り。

聖岳がずっと見えている。

聖平小屋から30分弱で薊畑の分岐に着いた。

南には、易老岳(左、2354m)と光岳(右、2591m)が望める。

それぞれ望遠で見てみよう。まずは易老岳。

そして光岳。

この標柱は東海フォレスト仕様で、静岡県の南アルプスには、あちこちにある。

ここを左折すると、西沢渡を経て易老渡に至る。

昨日のワゴン車の運転手の話では、易老渡への道が一般車通行止めになっている(タクシー3台でピストン輸送しているらしい)関係で、長野県側から聖岳に登りにくい状況になっており、ややお客さんが少な目とのことだった。
実際、聖平小屋も満員ではなかった。
当方は当然、直進して聖岳を目指す。

ここは恰好の展望台で、もちろん上河内岳も望めた。

その山腹に細く長い滝のような沢が見えた。

ちょっと登って、もう一度、上河内岳を望む。

ここは薊畑という地名だが、咲いていたのはマルバダケブキ。

その名の通り、葉っぱは本当にフキのようだ。

その葉っぱの陰に、エゾシオガマがひっそり。

改めて上河内岳。200名山に数えられているだけあって、やはり名峰だ。

その右は茶臼岳(2604m)への稜線。

木々の間から見えた岩壁は兎岳(2818m)。

聖岳もそのどっしりした姿を現してきた。

その右手前が小聖岳(2662m)だ。

うう、だんだん催してきた。やはり小屋で済ませてくるべきだったか。

2478mピークを通過。

あ~もう我慢できない。O君には先に行っていてもらい、ヤブへと入る。
まだ樹林帯だったので助かった。おかげで調子よく出た。
頑張れば、もう1本出そうだったが、時間節約のため、切り上げた。
撤収の時に、ザックの中からあれこれこぼれて、汚物の上に落ちそうになって危なかった。
ヤブから出ようとした時に、人が来たので、とっさに伏せた。
でも、それでもどうせ見られてしまうので、開き直って堂々と登山道に出て行った。
当然、目撃されたが、「小」だと思ってくれただろう。
結構、重装備の方だった。

彼とは少し距離をおきつつ、やや速足で、O君を追う。

でもO君の前にやはり、目撃者に追いついてしまう。

この白い葉っぱは何だろう。

聖岳の陰に入った。

振り返ると、上河内岳(左)とさっきのピーク(右手前)が明るい。

聖平越しに見る上河内。

もしかして、さっきの白い葉っぱはミネウスユキソウだったのでは。

小聖岳に向け、つづら折りの登りに入った。

その向こうに易老岳など。

ロープ場出現。

2478mピークを見下ろす。

その向こうに茶臼岳(右)。

上河内岳山頂部。

稜線の向こうに顔を表したのは、おそらく信濃俣(2332m)。

ダケカンバの林に入った。

その根っこに小さな命。

15分かかってやっと、O君の姿を捉えた。

再び展望が開け、易老岳と光岳。

左手(西)に見えてきたのは、しらびそ峠の「ハイランドしらびそ」ではないか。

うお~聖岳の西斜面はこんなふうになっていたのか。

ものすごい岩肌だ。

その左に兎岳。

これは小聖の山腹にあるこぶ。

ほぼ森林限界を越えたようだ。

西に連なる稜線が一望できる。

光岳(右)は北からだと、あまり目立たない。

手前は易老渡に至る稜線。苔平あたりか。

再び2478mピーク。

これは薊畑あたり。

それら全景。

さあ、小聖へもう少し。

眼下に聖平も見えてきた。まだ日が当たっていない。

最後に、影聖をどうぞ。

(つづく)
【2016年8月4日(木)】南アルプス南部
聖平小屋はもうすぐそこ。今、聖沢を右岸に渡ったところだ。
路面は水が豊か。


聖沢は赤、青、黄色~♪

右岸に渡ってからも、しばらく歩く。


赤い石が、なんだかうれしい。

青い花はトリカブト。

対岸にはシシウド。

この上が聖岳(3013m)だ。

いつの間にか、聖沢がこんなに小さな沢になっていた。

あれれ、また左岸に渡るんかい。小屋は右岸にあるのに。

すぐに赤石に目がいってしまう。

下流。

上流。

左岸に渡るとテン場が広がっていた。

てことは、小屋はすぐそこってこと?

おう、ちゃんとまたすぐに右岸に渡らしてくれる。

こちらにもテン場。

わ~、あれだ! やっと小屋に着いた~!

トイレは別棟らしい。

午後2時半。コースタイム6時間10分のところ、休憩時間も入れて5時間40分。

上出来だ。タカネマツムシソウもほめてくれた。

しかも、ちょうど雨がぽつぽつと落ちてきたところだったので、いいタイミングだった。

気温は19℃。比較的暖かい。

ここは1泊2食8500円だが、寝具持参の場合は1000円引き。シュラフを持ってきているので、翌日の昼食用弁当500円を含めて会計は計8000円だ。
受付を済ませて、まずは聖平小屋名物のウエルカムフルーツポンチをいただく。

1人1杯と書いてあったが、大丈夫だというので2杯いただいた。

疲れた体に甘いものは、本当にうれしい。めちゃめちゃ美味しかった。
本日の宿泊者は50人ほどだそう。ぎゅうぎゅうではないが、ゆったりでもないみたいだ。
泊まる場所は34番と35番、となりの33番が空いていて、32番から先には人がいる。
あとで受付に聞いてみたら、そこは空けてあるとのこと。
別グループなので配慮してくれたようだ。
33番も入っていると、かなり窮屈だったので助かった。
テントは見える範囲に14張りあった。あちらはわりと余裕だった。

とりあえず今日着ていたものは明日も着るつもりなので、それらを干してスエットに着替えた。
落ち着いたところで、ダウンも着込んで、外の休憩スペースに出て、ビールで乾杯。

いつもの通り、O君は500cc缶(700円)、私は350cc缶(500円)だ。
飲み干した後は、かつぎあげてきたウイスキーを湧き水で割ってちびりちびり。
雨が時折強く降ったが、屋根があるところだったので大丈夫だ。
向かいに座っていた男性2人と雑談。
40代くらいの方は静岡在住で、在任中に南アルプスは回ってしまいたいとのこと。
奥さんと2人で来ていた。
もう一人は60代後半くらいか、ここ数年で山を始めて、去年は百名山を一気に50座登ったのだとか。
今回は聖岳をピストンするらしいが、もう90座を超えているらしい。
ここを拠点に聖をピストンする人が多いことにちょっと驚いた。
大したもんである。私は聖岳で62座目。
それほどこだわりはないが、80を超えたりしたら、やはり制覇したくなるのだろうか。
途中、雨が小降りになったようなので、トイレへ。

別棟であることは分かっていたが、100m近くも離れていた。これは夜中は大変だ。

トイレからの風景。

オヤマリンドウの花が黒い。

ヤマハハコは今日初めて見た。

まだガスがかかっているが、これはたぶん小聖岳(2662m)だ。

沢の反対側にもテントが見えた。

夕食の時間(5時)が迫ってきたので酒場を撤収して、食堂へ。
本日は2回転のようで、我々は最初の回だった。
ここは、やまめの甘露煮と豚汁が評判らしい。

豚汁がおいしくて、珍しくお代わりをしたいくらいだった。
御飯は1杯にとどめ、ごちそうさま。
徒歩数分の分岐まで行けば、電波が通じるというので、6時前に、サンダル履きで行ってみた。

幸い雨は上がっている。

分岐を左折して、この道を行けば上河内岳(2803m)に通じている。

振り返ると、聖岳のガスがもう少しで切れそうだ。

その右に目をやると、東聖岳(2800m)はもう見えている。

分岐の右手は我々が明日歩く道だ。

おおっ、小聖より先に聖が顔を出した。

でも、すぐこんな状態に。

こちらにもガスが近づいてきたので戻ることにする。

戻ると、O君はもう寝ていたので、私は食堂でしばし休憩。


大人2人子供1人のグループの親じゃない方の大人と子供が会話をしていた。
男の子は小6くらいに見えたが、会話を聞いていると、なかなか賢そうな子だった。
暗くなる前にと思い、7時前にもう一度、分岐に出かけてみた。

すると今度は聖も小聖もきれいに姿を現していた。

上河内岳方面の稜線もそこそこきれいに見えた。

やはり通信に来ていた小屋のスタッフに聞いてみたら、夜は満天の星になるのだとか。
ぜひ、そう願いたいものだ。
方向指示盤の残骸のようなものを確認して、小屋に戻った。


明日の天気予報は晴れなのだが、午後からはまたガスがかかりそうだ。
7時すぎまで、また食堂でまったりして、シュラフに戻る。
部屋には、乾燥用のストーブがついていたが、私も間もなく寝てしまった。
【行程】2016年8月4日
聖沢登山口(8:48)~出会所小屋跡(9:17)~聖沢吊橋(10:02休憩10:19)~造林小屋跡(11:08昼食11:28)~乗越(12:06)~水場(12:18休憩12:30)~岩頭滝見台(13:09撮影13:16)~聖沢(13:58)~聖平小屋(14:28)
※所要時間:5時間40分(歩行時間:4時間45分)コースタイム:6時間10分
※登った山:なし
※歩行距離:7.5km
【2016年8月5日(金)】南アルプス
夜中は、8時半、11時半、2時半、3時半に目が覚め、11時半にトイレまで行った時は、空はもう満天の星になっていた。
ストーブは消灯の8時には消してくれたようだ。
4時に起床して、パッキングを開始。
4時半に朝食。

朝食後、外に出ると東の空が朝焼けに染まっていた。
小屋の方に聞くと、見ているのは中央が生木割山(2539m)、その右がハイ松尾山とのこと。

笊ヶ岳(2629m)のある稜線だ。
トイレは出そうだけど出なそうなので、とりあえずパス。
ここでトイレに行くと並ぶことになるし、ブツを出すまでまた時間がかかりそうだから、出発が遅れてしまう。

我慢して、5時前に出発。

まだ夜明け前。昨日2往復した木道を歩く。

今日は上河内岳(右)がくっきり見える。

その右には茶臼岳(左、2604m)。あちらもいずれ縦走せねばなるまい。

正面は仁田岳(2524m)?

その下は雲海だ。

振り返ると、早くも他の登山者が登ってきた。聖もばっちり見えている。

では、そろそろ出発しよう。

O君はもうあんなところまで行ってしまった。

ちょっぴり登って、聖平を振り返る。

ヤマハハコとミヤママツムシソウのお出迎えだ。


(つづく)
【2016年8月4日(木)】南アルプス南部
聖平小屋に向かって後半戦のトラバース道を進んでいる。

このあたり、やや崩落している。

ここが「山と高原地図」のいうところの「危」マーク地点だろうか。

足元はちょっとぬかるみ。

聖岳(3013m)の東尾根はやはり雲の中だ。

やがて御花畑へと入っていく。

黄色いのはマルバダケブキ。


木の桟橋と鉄の桟橋を通過する。


滑りやすいザレ場にはロープが取り付けられていた。

ヒメシャジン。


シモツケソウ。

ハナチダケサシ。

クサボタン。

キオン。

メタカラコウ。

御花畑を過ぎると、大きな沢を渡る。

水量は豊富だ。


谷の向こうは開けているが、上の方はやはり雲の中。

わずかに見えるのは天上小屋山だろうか。

上流を見上げてもガスが見える。


沢を渡ると当然、登り。


この先も御花畑。さっきも見たクサボタン。

メタカラコウの大群落。

シラヤマギク。

これは特定不能だった

センジュガンピ。

斜面一面、特定不能の花の中を行く。

これはコケの一種かな。

天狗の団扇。

なんて草花と戯れているうちに岩頭滝見台に出た。

正面に巨大な岩壁が見える。


そして、二つの滝が展望できた。

左側の滝。名前は分からない。


右側の滝。


展望を満喫したところで前進。

岩壁の下を行く。


ひっそりカニコウモリ。

湿っていて、ちょっと怖い桟橋を登る。


ホットケーキのような大判のキノコ。

この辺は、わりと平和な道だ。


ただ、桟橋だけは気が抜けない。

気の早い葉っぱはどこにでもいる。


下りっぽくなってきた。


キオン。

ハナチダケサシ。

ハクサンボウフウ。

どんどん下っていく。


おお、小屋まであと1時間20分。だいぶ近づいてきた。

見晴らしの良さそうな場所があったので行ってみた。

佐藤修一さんという方の遭難慰霊碑が立っていた。合掌。

岩の上に立つと、眼下に聖沢がよく見えた。


激しく岩を削って、峡谷になっている。

左岸からは細い滝が流れ込んでいる。

この滝も岩を断ち切るように流れている。

あの山のふもとに聖平小屋があるはずだ。

もう雪解け水ではないだろう。

では登山道に戻ろう。

キオンが多い。

これはかわいい葉っぱだが種類は分からない。

キオンとトリカブトの大群落。


一瞬だけ貴重な眺望。

岩壁をへつった先に、またしても大群落。


お互いに結構、主張が強い。


御花畑を通過すると、沢を渡る。

これが聖沢だと思ったら、違った。

これで、あとは沢沿いを遡ればいいんだと思ったら、なぜか急な登り。
「ええ? どうして」とかなり混乱してしまい、写真もろくに撮れなかった。

(これ1枚のみ)
もうひと尾根越えて下ったところに橋がかかっており、これが聖沢。

やっと合点がいった。

さっきの沢は枝沢だったのだ。
これこそが聖沢。さっきの沢とはやはり貫禄が違う。

岩をも穿っているし。

あとは、ほんとに沢沿いをだらだらと登るだけ。

おお、落下している橋がある。

以前はここで渡り直して右岸を登っていたのだろうか。

楽な道ではあるが、さすがにずっと樹林帯で疲れてきた。

でも、これぞ南アルプス。

お、赤い岩。赤石岳の由来となったチャートがここにもあった。

前方に見えるのは、聖岳の前衛の山々だろうか。


エピローグもかなり長い。


立ち枯れ状態になって、周りが開けてきた。

象の鼻。

分かってますって。

ぬかるみはなくていいって。

お、最後の橋かな。

再び右岸に渡る。

赤い石が目立つようになってきた。

正面は薊畑あたりのピークだろう。

右岸ではトリカブトのお出迎えを受けた。

(つづく)
【2016年8月4日(木)】南アルプス南部
聖岳(3013m)登山の序盤、長いトラバース道を進んでいる。

聖沢の谷は深く、傾斜も急だ。時折またぐ沢も崖のようである。


実際、山側が崖になっているところもある。

「山と高原地図」に「柵多数」と書いてあるだけに、確かに多い。

聖沢吊橋に向かって、徐々に高度を下げていく。

斜めになった桟橋はちょっと怖い。

細かい落石が溜まっていた。

吊橋に至る階段。

登山口から1時間15分ほどで、聖沢吊橋に到着した。

コースタイムは1時間半なので、結構いいペースだ。

かなり揺れるので、橋の上からはこの1枚しか写真が撮れなかった。

無事渡り終えて振り返る。

橋の下の河原でしばし休憩。

河原に下りるとき、上から単独女性が下りてきて、河原に下りようとしたので、O君の動きにつられたのかと思い、「道はあっちですよ」と言ったら、「わかってます」と言われてしまった。
やはり余計なことは言わない方がいい。
休憩しつつ渓流を愛でる。

かなりの水量だ。

ちょっと水浴びしたくなったが、時間を食うので止めておいた。

それにしても、このフライパンは誰の常備品だろう。

しばらくすると、さっき抜かされた重装備の男性が沢の上から下りてきて、正規の道を登って行った。
道を間違ったのか、うんこでもしに上流に行っただけだったのか。
それは不明だが、とにかくこの人とはお互い休んでいる間に、抜いたり抜かれたりすることになった。
15分ほど休んで、我々と同時刻のバスに乗ってきたと思しき登山者が追いついてきたので、我々も出発することにする。

ここからは再び急坂となる。

次に傾斜が緩むと思われる造林小屋跡まで標高差は380m。

本日最大の難所と言っていい。

足場は必ずしもよくない。

足元の葉っぱに励まされつつ。


これはイケマ。

原生林の中をあえぎあえぎ登る。


急斜面だからか木がまっすぐに伸びない。


ガレ場~

道はこんなにつづら折りになっている。

今度は大きな岩が多くなってきた。


造林小屋のすぐ手前で、たばこ休憩をしていた例の男性を抜かした。
もう先は見えた。

吊橋から50分弱で、造林小屋跡に到着。

コースタイムは1時間10分なので、ここでも好成績を残した。

確かに、小屋跡らしきものがあった。

何となく造成されたような平坦地もある。

時刻は11時過ぎ。朝食は6時前、車での移動中に食べてしまったので、もういい頃合いだ。
この倒木に腰掛けて、お昼にする。

私もO君も助六寿司だ。

しかし、プラケースを4日間持ち続けなければいけないことに今気づいた。
彼は気にしないと言っていたが、ちょっと失敗した気分。
ここまで全然虫がいなかったが、しばらくじっとしている間に虫が寄ってきたので、蚊取り線香に火を付けた。
先週、四国でアブに襲われて往生したので、虫対策には気を遣ったつもりだ。
さて効くのかどうか。
20分ほどの休憩で出発。

この先はしばらくだらだらした登りが続く。

相変わらず樹林の中でかなり単調だ。

シャクナゲやシダもとくに珍しくないし。


このシャクナゲは生まれたばかり。

このキノコもちょっとかわいい。

でも黙々と歩く。

景色が全く見えないので、足元を注目するしかない。


これはかつての木材運搬に関連した滑車だろう。

ハイドレーションでひと息。

途中、聖岳が見えるポイントがあると「山と高原地図」に書いてあるが、すでにガスがかかっており、全く見えなかった。

古びた木道&桟橋を進む。


左側が切れ落ちていた。

2011m標高点に近い乗越の手前で、昼食をとっている間に抜かしていった例の男性が休んでいた。また、我々が先行する。

おや。

ベニテングタケがぽつん。

乗越では別の単独男性が休んでいた。こちらは、休まず前進。

造林小屋跡から乗越まで40分弱。コースタイムは1時間なので、かなり調子がいい。
ここからは右手に聖岳東尾根の崩落箇所が見えた。

この先、道は尾根の右側に転じる。

そして再びトラバースとなる。

木々がわりと若い。

山側からは時々、水が浸みだしている。

この先の水場手前のちょっと道幅が広くなったところで小休止。

お昼を食べてからちょうど1時間経っていた。

10分ほどで出発。

このあたりからトリカブトが目立つようになってきた。


水場。「山と高原地図」に「水」マークとして記されている場所だ。

倒木はすっかり腐ってコケむしている。

生まれたばかりのマルバダケブキ。

水場付近の道はしっかり湿っていた。

トリカブトは怖いけど、やっぱり美しい。

日蔭は緑が濃い気がする。



おお、エゾシオガマ。

水場を過ぎると、道は登りに転じる。

左手、木々の隙間から一瞬だけ滝が見えた。

どっこいしょ。

この先に「山と高原地図」に記載のある吊橋。

これもなかなか怖い。

吊橋はさすがに展望が開けており、さっき見えた滝が真正面に見えた。

標高はまだ2100mほど。乗越から100mも登っていない。

(つづく)
【2016年8月3日(水)】南アルプス
4日(木)から高校の同窓生O君と3泊4日で南アルプスの南部(聖岳、赤石岳、荒川三山)を縦走する。
かなり前から予定していた夏休み前半の山行だ。
南アルプスの本格的な縦走は初めて。天気予報も上々だ。
前日の3日(水)は裾野市在住のO君の自宅に泊めてもらった。
18時に会社を出るつもりだったが、17時には仕事が終わったので、早々に退社。
例によって東京駅のコインロッカーからザックを回収し、登山靴に履き替えて、17:26発のこだま675号に乗り込んだ。
発車10分前くらいに乗れたので、3人席の通路側を確保できた。
でも、発車直前までに席はかなり埋まり、品川でほぼ満席、新横浜では立ちが出るほどになった。
車中、夕刊を読みながら、缶チューハイを飲んでいた。
18:19三島着。

O君が迎えに来てくれていた。
まずは晩飯。約束通り、うなぎ屋へ。
有名な「桜屋」は休みらしく、彼が以前来たことがあるという「うなぎすみの坊」。
行列になっていないかと心配したが、余裕で座れた。
うな丼の並(税抜き3000円)と珍味などを注文。日本酒をいただく。


久々のうなぎ。旨かったし、明日からの活力になった。
裾野のO君宅に戻って、シャワーを浴びてからしばし飲み直し。
乾き物をつまみながら、ウイスキーの水割りをちびちび。
でも明日は早いので10時半には就寝した。
部屋にはエアコンがないので、やや暑かったが、全く平気だった。
【2016年8月4日(木)】南アルプス
4時起床。準備をして4時半前に出発。
新東名の新静岡ICで下りてすぐのローソンで、本日の昼食を調達。
飲み物や行動食はすでに準備してある。
山道に入ると、O君が「この道を一人で走ると長いんだ」とつぶやくので、「適当なところで運転代わるよ」と申し出たら、「じゃお願いするわ」ということになった。
口阪本温泉の入口で交代する。

ブレーキがかなり踏み込まないと効かなかったので、ちょっとあせった。
大日峠を下ると、井川ダム。
ここには以前、乗り鉄で来たことがある。
途中の井川集落でトイレ休憩。6時半。

私も出そうな気がしたが、一つしかない個室はO君に先を越されてしまったので、女子トイレへ。何とかひねり出した。

それにしても、井川集落はなかなか面白そうだ。

今度、ここから南アルプスに入る時は、井川をゆっくり歩く時間も取りたいと思う。

畑薙の臨時駐車場にはここからさらに40分近くかかり、7時過ぎに到着。

駐車場にはすでにかなりの車があったが、まだまだ余裕があった。


でもバス乗り場はかなりの行列になっていた。

テント側とバス停側に分かれて並んでいるので、どっちが先頭なのかよく分からない。
聞くと、テント側が先頭で、バス停側が後ろらしい。

ということで、バス停側の最後尾に並ぶ。

ザックを置いて、待ち時間を利用して近くの水場を探検。

バス発車時間の7時半近くになって、やっと東海フォレストのマイクロバスがやってきた。

運転手は、バス停側に並んでほしいと言ったが、先頭に並んでいた方々が、さっきのバスはこちらで受け付けていたんだから、こっちが先だと主張。
結局、運転手が折れて、テント側に全員並ぶよう指示。
やむなくバス停側の人々がぞろぞろと移動した。
O君は「最初から分かれずに並べばいいんだ! なして、こんな変な並び方してるんだ。俺たちも最初からこっち(テント側)に並んでいればよかった」と、吐き捨てた。
数えてみたら、自分の前に60人。後ろには10人くらい並んでいた。

これではバス3台くらい必要だ。
とりあえず、1台目のバスに先頭の方々が乗り込む。
これまで受付の人がいたわけではないので、運転手がやっと集金をしている始末。
実に手際が悪い。
これじゃあ、我々はいつ出発できるのかと思ったが、まもなく2台目がやってきた。
それに乗る人がなんと我々の前の人で満員。
ぎりぎりで3台目になってしまった。
3台目のマイクロバスはまだ来ていないので、「やれやれ」と思っていたら、ワゴン車が来ていて、それに乗れるらしい。
ザックもバスだと膝を上に載せなければならなかったが、こちらだと荷台に置いてもいいというのでラッキーだった。
結局、出発できたのは定刻から20分遅れて7:50過ぎ。
運転手はよくしゃべる人だった。
NHKの取材クルーが、我々の逆ルートで入っており、百間洞の小屋で一緒になるだろうという。
「いいことあるよ」という前置きの情報だったが、ただでさえ小さな小屋にクルーが10人近くも入ったら、混み合うだけだ。全くいいことではない。
ゲストは、「実践!にっぽん百名山」によく出演している俳優の金子貴俊とライターの小林千穂さんだとか。お友達の鈴木みきさんだったら、よかったのだが。
それと、南アルプスは土日がとくに混むということはなく、平日も含めてあまり波がないという。
前泊なども含めると、最低4日はかかるので、休みがしっかり取れる人しか来られないからだそうだ。
今日も木曜日だが、100人以上入っているという。
我々の前に7時の臨時バスが出たようだ。
バスは3台あるらしいが、1台は故障中。というわけでワゴン車の出番となったわけだ。
そんな話をしているうちに沼平のゲートを通過。

この手前にも駐車場があり、かなりの台数が止まっていた。
ここに駐める人は、ウソッコ沢から茶臼岳(2604m)に登る人か、徒歩で椹島まで行く人なのだろう。
ゲートから道はダートとなる。
途中、先行のバスが道を譲ってくれ、デリカはものすごいスピードで走り出した。
いや、そんな急がなくていいです。
O君は隣に座った女性グループの一人に「どう回るんですか」と親しげに声をかけていた。
途中見えた山は上河内岳(2803m)だという。
手前に聖岳(3013m)が見えるポイントがあったが、ちょうどダンプが道を譲ってくれたところで、早く通過しないといけないから案内できなかったという(帰りには見られた)。
8:40に聖岳の入口、聖沢登山口に到着。

靴のひもを結び直し、ストレッチをしているうちに、さっき抜かしたバスが到着、3人くらいが下りた。

それを横目に、8:50に登山開始。まずは沢沿いに樹林帯の中の道を進む。

登山口の標高は約1140m。今夜の宿の聖平小屋が約2270mなので、本日の標高差は1100mちょっとだ。
間もなく谷から離れ、急斜面をつづら折りに登っていく。

トラバース道に出るまで一気に標高差250m登らなければならない。

さすがにザックが重い。
いきなり早くも下ってくる人とすれ違った。早朝、聖平小屋を出たのだろう。

10分ほどで尾根に出た。

しかし、急坂が終わったわけではない。

これは「みんなの花図鑑」に問い合わせても名前は分からなかった。

左手が開けて、たぶん青薙山(2406m)が見えた。

こちらは同定不能だった。

30分かからずに急登をクリア。

意外に楽だった。

この先は聖沢吊橋まで長いトラバースとなる。

尾根をひとつ越えるところに廃墟があった。

おそらく「山と高原地図」に記載のある出会所小屋跡だ。

もうほとんど跡形もなかった。

トラバース道では、時々鉄橋で小さな沢を渡る。


久しぶりの山でご機嫌のO君。

夏の緑がまぶしい。

1418m標高点に通じる尾根。登山道ではありません。

黙々と平らな道を進む。

危なげな木の桟橋には手すりとロープが備え付けられていた。

ワイヤーで吊った鉄橋。

落石で手すりがひん曲がっている。

これは、わりと新しい組み立て式の桟橋。

たまには振り返ってみる。

実は吊り橋までに60m下ることになる。もったいないことだ。

(つづく)